宙に浮いた「TikTok」の運命は? まとまらない買収交渉の顛末:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
人気アプリ「TikTok」の米事業売却が合意に至らず、中途半端な状態だ。安全保障リスクを理由に、トランプ政権が使用禁止や米企業による買収に向けて動いていた。このままだと新政権が判断することになる。日本でも禁止にはならないだろうが、リスクの可能性は知っておくべきだ。
TikTokによって選挙活動が「妨害」?
大統領令が出された時点で、TikTokは世界でダウンロード数が20億回を超える人気アプリになっていた。しかも、実は大統領令署名の前には、トランプの大統領選の選挙活動を、TikTokがはからずも「妨害」する出来事も起きている。
20年6月、トランプ大統領はコロナ禍で久しぶりの遊説をオクラホマ州で行った。だが、その会場のチケットをTikTokの反トランプユーザーらに「空予約」され、当日の会場では予想以上に観衆が少なくなるという、大恥をかいた。自分のイベントの人出にいつも敏感なトランプだけに、かなり怒りを覚えたことは間違いないだろう。
それが直接的な引き金になったのかは分からないが、その後にマイク・ポンペオ国務長官がTikTokの危険性を強く主張するコメントを出していることからも、何らかの影響はあった可能性が高い。
そして、そこから混乱が続いた。TikTokは米国などのビジネスを売却する方向で動き出し、米ソフトウェア大手オラクルや米小売大手ウォルマートなどが買収交渉に名乗りを上げた。しかし買収交渉はなかなかまとまらず、バイトダンス側が禁止措置に対し告訴して措置が停止されるなどして、3度目の延長期限となった12月4日を迎えるという形になった。それでも、まだ最終合意には至っていない。
ではこれからどうなるのか。ひとまず、政権移行時でもあるので、交渉が続いている限りはTikTokが使用禁止になることはない。要するに、放置されている状態だと言っていい。事実、期限が過ぎても、不正選挙を訴えることで忙しい大統領令を書いた張本人のトランプは、何ら発言すらしていない。
だがすでに述べた通り、政権移行の中途半端な時期に、合意などが大きく動くかどうかは分からない。コロナ禍の行動制限、クリスマス休暇などを控えている米国で、1月20日までに合意がなされることはないという向きもある。そうなれば、政府としての判断を下すのは、ジョー・バイデン大統領の新政権ということになる。
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