宙に浮いた「TikTok」の運命は? まとまらない買収交渉の顛末:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
人気アプリ「TikTok」の米事業売却が合意に至らず、中途半端な状態だ。安全保障リスクを理由に、トランプ政権が使用禁止や米企業による買収に向けて動いていた。このままだと新政権が判断することになる。日本でも禁止にはならないだろうが、リスクの可能性は知っておくべきだ。
バイデンはTikTokをどう見ているか
では、バイデンはTikTokの動きについてどう考えているのか。現在のところ、バイデンがTikTokの使用禁止措置の問題についてどんな意見を持っているのかは不明である。だが実は、バイデンもカマラ・ハリス次期副大統領も、10代や20代の娘や孫などがいて、彼らがTikTokで存在感を見せていることがあり、若者がいかにTikTokを楽しんでいるのか分かっている。しかもTikTokを禁止にすることで数百万ドル規模の広告など、経済活動に大きな影響を与えかねないことも、だ。
特に家族の不幸が多いバイデン一族だけに、家族の結び付きは強いとも言われている。公私混同ということになるかもしれないが、禁止にするという強硬な措置は取らないのではないだろうか。
ただトランプが悪役になって強硬路線でTikTokをけん制してくれたという事実はこれからも残る。そしてその流れのまま、買収合意を促し、中国に妥協したというイメージを与えないまま一応の解決に至ることもできるだろう。そうなれば、いくつかの米企業がTikTokに関与し、CFIUSが懸念してきたTikTokのスパイ行為疑惑というリスクも回避することにつながる。
そもそも、もはや米政府は、大統領が誰であっても、ハイテク覇権を目指す中国に対しては弱腰になることはないだろう。中国を「敵」と見なして関税合戦をしてきたトランプは自国の経済に関しても、企業の利益や労働者に痛みを与えたが、バイデンは「競合相手」として対峙していくことになる。同盟国などを活用しながら、トランプよりも冷静で大人な交渉・けん制を行っていくに違いない。
関連記事
- 禁止か買収か TikTokがトランプの目の敵にされる「4つの理由」
人気アプリ「TikTok」を巡って、米中の混乱がさらに深まっている。なぜ米政府はTikTokの禁止や買収に言及しているのか。トランプ大統領がこのアプリを禁止したい理由は4つある。TikTokに逃げ道は残されておらず、こういった締め付けは今後も続く可能性が高い。 - データも人材もファーウェイに流出? 倒産するまで盗み尽くされた大企業に見る、中国の“荒技”
2009年に倒産したカナダの大手IT企業が、中国から継続的なサイバー攻撃を受けていたことが報じられた。ファーウェイなどに情報や人材が流出したと見られている。コロナ禍で体力が弱った日本企業も標的になっており、すでに工作が始まっていても不思議ではない。 - 「シリコンバレーは中国に屈する」 Google元会長のエリック・シュミットが声高に唱える“危機感”
トランプ大統領が中国の脅威を煽っているが、Googleのエリック・シュミット元会長も、AIの分野で中国への危機感を主張する。中国は人権を無視したデータ収集や企業への巨大投資によって、スマートシティ構想を加速。日本も含めて、研究開発を進めないと追い付けなくなる。 - ナイキはなぜ中国に屈したのか 巨大市場を巡る“圧力”の実態
米NBAチームGMが香港デモの支持を表明して騒動になっているが、中国でビジネス展開するスポーツ大手のナイキはダンマリを決め込んでいる。社会的なメッセージを発信してきた同社でさえ、巨大市場を武器にされると口をつぐんでしまう。そこに中国ビジネスの難しさがある。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - 罰金を科された「TikTok」は、第2のファーウェイになるのか
世界的に人気の動画共有アプリ「TikTok」の運営企業が米政府から罰金を科された。ファーウェイに続き、また中国企業が米国の目の敵にされている、と不穏な見方が浮上している。なぜTikTokに対する警戒感が広がりつつあるのか。この騒動はどこへ向かうのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.