収入減少、内定率悪化…… コロナで顕在化「若者が生きづらい」社会の希望なき未来:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
コロナ禍で若者の生きづらさが顕在化している。失業率は若者ほど上昇、収入も減少、就職内定率も悪化している。そもそも日本はずっと賃金が増えていない。おカネがないと、困難に対処するリソースも得られない。若者の雇用や生活支援にもっと向き合うことが必要だ。
おカネがないと、困難に対処する“活力”も失う
今後はさらに世代間格差が深刻になり、若年者が生きづらい世の中になることも懸念されています。収入の低さから、さまざまな困難に対処するためのリソースの獲得が難しくなり、メンタルヘルスにもネガティブな影響が及ぶ可能性が極めて高いのです。
リソースとは、世の中にあまねく存在するストレッサー(ストレスの原因)の回避、処理に役立つもののことで、リソースの欠損は生きる力を奪います。お金や体力、知力や知識、学歴、住環境、社会的地位、サポートネットワークなどは全てリソースで、リソースはウェルビーイング(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態)を高める役目も担っています。例えば、貧困に対処するにはおカネ(=リソース)が必要ですが、金銭的に豊かになれば人生満足度も高まる、といった具合です。
資本主義社会ではカネのある人ほど、さまざまなリソースの獲得が容易になり、「持てる者」は突発的な変化にも素早く対応できます。
一方、おカネがないと、その他のリソースも手に入れられなくなる。このようなリソースが欠けた状態は慢性的なストレスになり、突発的な出来事に襲われるとダイレクトにダメージを受けます。
しかも、リソースが欠けた状態は「孤独感」と背中合わせです。他者と共に過ごし、信頼をつなぐことで安心を得てきた人間にとって、共に過ごす人がいないことは絶え間ない不安につながります。おカネがない、知識がない、情報がない、サポートしてくれる人がいない、相談できる人がいない、気兼ねなく話せる人がいないなど、リソースが次々と制限され、社会から切り離される。
まさに希望なき社会。それが日本の姿なのです。
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