収入減少、内定率悪化…… コロナで顕在化「若者が生きづらい」社会の希望なき未来:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
コロナ禍で若者の生きづらさが顕在化している。失業率は若者ほど上昇、収入も減少、就職内定率も悪化している。そもそも日本はずっと賃金が増えていない。おカネがないと、困難に対処するリソースも得られない。若者の雇用や生活支援にもっと向き合うことが必要だ。
就職内定率は7割を下回る
今から3年前の17年3月。日本財団が衝撃的な数字を公表しました。
なんと過去1年間に、53万5000人が自殺未遂を経験したというのです(推計)。
「自殺未遂者は、自殺者数の10倍程度」というのが、それまでの定説でした。ところが日本財団が行った調査では、20倍近くもいることが明らかになった。性別では男性26万4000人、女性27万1000人と若干女性が多く、年代別では20代が最も多くて、次いで30代と若い世代ほど多くなっていました。
しかも、そのうち、女性の49%、男性の37.1%が、「4回以上、自殺未遂を経験した」と回答したのです。さらに、「本気で自殺したいと考えたことがある」人は25.4%と、4人に1人。そのうちの6.2%は「現在も自殺を考えている」と回答しました。
日本の自殺率は先進国で最も高く、コロナ禍でも若年者の自殺者が増えているとされていますが、これまでの若者たちの「生きづらさ」がコロナ禍でさらに顕在化したと解釈できます。
秋田大学が行った調査では、男女ともに回答者の1割以上に中等度のうつ症状がみられたとされています。また、21年3月卒業予定の大学生の就職内定率(10月1日時点)も69.8%と、前年の同じ時期に比べ7ポイント低下し、過去2番目の大幅な悪化を記録したと報じられました。
業種によっては採用を増やした企業もあるようですが、航空、旅行、百貨店などが採用を抑制あるいは中止していますし、この傾向は長期化する恐れも出てきています。
求められる人材もアフターコロナではかなり変わってくるでしょうから、学生や若い労働者たちは、誰も経験したことないほど、「働く」ことが難しい時代を生きることを余儀なくされるのです。
関連記事
- 月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環
米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。 - 「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”
40歳前後になった「就職氷河期」世代に対する支援に、国を挙げて取り組むことを安倍首相が表明した。しかし、就職時の不況や非正規雇用の拡大など、さまざまな社会的要因によって追い詰められた人たちの問題は根が深い。実効性のある支援ができるのか。 - 女性の自殺“8割増”の厳しい現実 放置されてきた、2つの「低賃金問題」
10月の自殺者数は2000人を超え、特に女性は前年同月比で8割以上増加。女性の貧困問題としてシングルマザーが注目されるが、問題はそれだけではない。「非正規の低賃金」「女性の低賃金」の2つは社会全体の問題だ。「明日は我が身」かもしれないのだ。 - 生き残りをかけたANA「400人出向」 左遷でなく“将来有望”のチャンス?
ANAホールディングスが社員を他社に出向させるとして注目されている。出向というとネガティブなイメージだが、企業にとっても社員にとっても「成長」への布石となる側面もある。人は環境で変わるからだ。新しい雇用の形として、他の企業も前向きに取り組んでほしい。 - 単なる“ワーク”と化す? 「ワーケーション」普及が幻想でしかない理由
旅先で仕事をするワーケーションについて、政府が普及に取り組む考えを示した。しかし、休暇中でも休まらないという問題があるほか、対応できるのはごく一部の企業。テレワークさえできていない企業も多い。IT環境整備をするなら、日常の生活圏を優先させるべきだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.