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収入減少、内定率悪化…… コロナで顕在化「若者が生きづらい」社会の希望なき未来河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)

コロナ禍で若者の生きづらさが顕在化している。失業率は若者ほど上昇、収入も減少、就職内定率も悪化している。そもそも日本はずっと賃金が増えていない。おカネがないと、困難に対処するリソースも得られない。若者の雇用や生活支援にもっと向き合うことが必要だ。

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貧困は「人格の欠陥」ではなく「現金の欠如」

 なんだか書いているだけで苦しくなってきますが、若年者の雇用問題と生活支援に取り組まないと、この国の未来はなくなるのです。

 しかしながら、20代や30代の若い世代への支援策はあまり議論されていません。菅首相の記者会見(12月4日)でも、「ひとり親世帯については(低所得世帯)1世帯5万円、さらに2人目以降の子どもについては、3万円ずつの支給を年内をめどに行います」と述べ、ひとり親世帯などに臨時特別給付金を再支給することを明らかにしましたが、所得が減った若者への言及はありませんでした。

 採用に関しては、「卒業後3年以内は新卒扱いで」と政府が経済4団体に要請していますが、朝日新聞と河合塾の調査で、全国の国公私立大のうち少なくとも190大学が、「経済的理由による退学・休学者」が本年度末に増えると予想していることを鑑みれば、卒業できない若者の支援にはなりません。

 若者対策の議論を早急に進めてほしいですし、その際、困窮している人たちに焦点を絞った「ベーシックインカム(最低限所得保障)」の導入も、個人的には議論してほしいと考えています。

 「ピケティに次ぐ欧州の知性」と称されるオランダ人歴史学者で、ベーシックインカムの導入を訴えたルトガー・ブレグマン氏は、こう訴えます。

 「Poverty isn't a lack of character, it's a lack of cash(貧困とは人格の欠陥によるものではない。貧困は現金の欠如によるもの)」。ホームレスなどは最初から怠惰だったわけではないし、貧困層が薬物をより頻繁に使用するのは、基本的欲求(寝食住)が満たされていないからだ、と説きました。

 日本では竹中平蔵さんの妙な発言で、ベーシックインカムの理念とは懸け離れた議論が進んでいるようですが、基本に戻ってきちんと経済的弱者に向き合ってほしいものです。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)


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