法整備、オフィスの在り方、DX……「総務」の視点で振り返る2020年:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。2020年最終回となる今回は、総務の視点から今年1年のニュースや変化を振り返る。
さて、ここまではハード面を見てきたが、ここからは企業の取り組みなどを見ていこう。
20年は、新型コロナによって今までなかなか導入されていなかった在宅勤務が一挙に進んだ年であった。従前は、一部の限られた人しか利用されなかった、あるいは許可されていなかった在宅勤務だったが、緊急事態宣言が発令されてからは、強制的に在宅勤務となった企業も多かったことだろう。在宅でも仕事ができるように、環境整備や新たな手当の支給など、総務の現場が主導して一挙に環境と制度が整えられていったはずだ。
また、在宅勤務の実現のためにデジタルトランスフォーメーション(DX)も加速度的に進み始めた。こと総務に関しては、在宅勤務を阻害する3大課題、「押印」「代表電話」「郵送物対応」をテクノロジーで解決できるソリューションの導入も進んでいる。在宅勤務から程遠いと思われがちな総務部署でも、フルリモートを実現できた企業もある。
オフィスの在り方、どう変化?
在宅勤務、あるいは、コワーキングスペースやサテライトオフィスというサードプレースでの仕事、さらには、リゾート地で行うワーケーションなど、働き方、働く場の多様化も一挙に進んでいる。その結果、全てがそろった「万能型オフィス」から、特定の機能、特にリアルで集まる必要がある仕事に特化した「機能特化型オフィス」の構築を検討する企業も増えてきている。つまり、今まではオフィスはあって当たり前、出社することが当然だった世界から、オフィスの存在意義が問われた1年でもあった。
また、オフィスでの感染も多いことから、安全性の確保も大きなテーマとなった。密を避けるために、出社率を30%や50%に抑えることや、席を間引くなどの工夫をしている企業も多い。あるいは、コピー機など機器を使ったらすぐ消毒、マスク着用の義務化、検温や手洗いの励行など、ニューノーマルの働き方がかなり定着してきた。
筆者が編集長を務める月刊総務の調査では、在宅勤務が常態化し、出社率を抑えることでオフィスの床面積削減を検討している企業が、約7割にのぼることも分かった。契約期間満了をもって、多くの企業がオフィスの縮小に走るとみられている。その分、賃借料、光熱費、定期代がコストカットできることになる。ただ、これを単純なコスト削減として喜ぶのではなく、総務としては、社員のエンゲージメントが高まる仕掛け投資する、在宅勤務の環境を良くする、そんな戦略的投資に回したいものだ。
関連記事
- 総務よ、安易に「オフライン回帰」を許すべからず 今、総務に求められる態度とは?
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。「オフライン」へと回帰する企業も多い中、もっとオンラインを使いこなす姿勢こそが総務に求められると豊田氏は指摘する。 - BCP、本当に十分? 調査で読み解く、コロナ禍で浮かんだ課題と今後
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。コロナ禍で注目度が高まるBCPだが、調査で見えた現状と課題とは? - 生産性を高める「健康」と「幸福」 総務が防ぐべき“宝の持ち腐れ”とは?
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。コロナ禍の中、いかに従業員の「健康」を維持・増進し、「幸福」へとつなげられるかが総務主導で生産性を高めるカギだと豊田氏は指摘する。 - 今こそ「腕の見せ所」 第2波が到来したコロナから、総務は会社をどう守る?
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。第2波が到来した新型コロナから、総務はどう会社を守るべきか。出社させるのか、在宅にするのか。出張や通勤など、移動の制限を設けるのか、プライベートでの感染症対策をする場合には、どこまで踏み込むべきなのか。勘所を豊田氏が解説する。 - どうする?フリーアドレス 成功のための「5箇条」と、抵抗勢力の乗り越え方
コロナを機に普及した在宅勤務だが、緊急事態宣言が解除されてからオフィス出社へと戻す企業も相次ぐ。しかし、今後は在宅勤務だけではなくテレワークを実施していくことが、企業にとって生き残りの術であることは明らかだ。そこで、今回はテレワークの実施に必要不可欠ともいえる「フリーアドレス」のポイントを解説する。 - 総務のテレワークを巡る「衝撃の数字」 フルリモート実現の急所とは?
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。総務のテレワークに関する調査で明らかになった衝撃の数字を基に、総務のフルリモートを実現するための急所はどこにあるのかを解説する。 - もうオフィスは不要なのか、それともまだまだ必要なのか 総務から考えた「結論」
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。いま、急激なテレワーク導入により、一部で「オフィス不要論」が出始めている。中にはコストなどの面から、オフィスを廃止しフルリモートに移行する企業も出てきた。総務業務との結び付きが強いオフィスを巡るテーマを、豊田氏はどう考えているのか? - テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た
テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.