「高く仕入れて、安く売れ」 なぜSaaSビジネスは理解されないのか?(2/3 ページ)
既存の財務諸表の見方からすると、SaaS企業の評価は厳しいものとなることが多い。赤字先行型で、なかなか利益が出にくいモデルだからだ。そうなる構造的な理由はどこにあるのか。ERPのフロント機能をクラウドで提供する、国内SaaS企業のさきがけの1社でもあるチームスピリットの荻島浩司社長に、SaaSビジネスの捉え方を聞いた。
初期コストの大きさは参入障壁にも
一方で、初期開発コストが高く、売り上げが少しずつしか上がらないことは、大きな参入障壁にもなる。「受託開発で成り立っている会社がSaaSビジネスに進出しようとすると、当初、売り上げが10分の1とか、もっと小さくなる。なかなか移行できない」(荻島氏)
この初期に売り上げがたちにくいという特性は、SaaSビジネスを始めた会社にもジレンマとしてのしかかる。顧客からのカスタマイズ依頼を受ければ、早期に大きな売り上げを作ることができるからだ。「エンタープライズ向けサービスでは、カスタマイズしてほしいという要望が強い。カスタマイズを受ければ数千万円の売り上げとなるので、カスタマイズをしたくなってしまう。しかし、これを受けると、エンジニアを取られてサービス自体が中途半端なものになってしまう」(荻島氏)
この誘惑を跳ね除けてシングルソース、マルチテナントを実現することが重要だと荻島氏は説く。しかし、カスタマイズなしの汎用仕様とするには、深い業務知識と経営者の強固な意思が必要だ。経営者にとって、直近の売り上げと長期的なサービス開発のジレンマをどう解消するかが焦点となる。
1種類のプロダクトだけを開発し、それを複数のユーザー企業に提供することで、すべての開発リソースを注力できる。ユーザーが拡大するにつれて、フィードバックが得られ、それをプロダクトに反映させることで、継続的に進化させることができる(チームスピリット資料)
大きな初期投資をどうやってまかなうか
大きな初期投資が必要で、かつ赤字先行というSaaSでは、当然初期にかかるコストが大きくなる。そのための資金をどう調達するか。特に初期のSaaSでは、ここが大きなネックとなっていた。
チームスピリットのリリースは2011年の3月。そして、同年11月には米セールスフォース系のファンドがリードする形で、約1億円の資金を調達した。当時はSaaSというビジネスモデル自体があまり理解されておらず、ここで資金を調達できたことが大きかったと荻島氏は振り返る。
「銀行からの融資は、運転資金のような名目でないと貸してもらえず、ほぼ難しかった。セールスフォースのようにSaaS自体を理解しているところがいて助かった」(荻島氏)
現在では国内でもSaaSに関する理解は深まってきたが、それでも国内外の温度差はある。「国内の機関投資家は、PER(株価収益率)やPSR(株価売上高倍率)という見方をする。一方海外では、なぜ利益を出すのか。この成長のタイミングではトップラインを伸ばしていくべきではないか、と言う」(荻島氏)
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