2015年7月27日以前の記事
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えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長と沢渡あまねが語る「地方企業の問題地図」 いすみ鉄道の成功から見る「地方を救うブランド化」地方企業の問題地図 【後編】(4/4 ページ)

「地方企業の問題地図」――。千葉県のいすみ鉄道を経営危機から救い、現在は新潟県のえちごトキめき鉄道の社長を務めている鳥塚亮氏と、現在浜松市に身を移して組織改革・ワークスタイル変革の専門家として活動している沢渡あまね氏に対談してもらった。後編では、鳥塚氏が取り組んだいすみ鉄道の改革の手法と、地域を変えるために必要な考え方を聞く。

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地元を良いところだと思うことが全て

沢渡: 脱東京や移住ブームで、今後も都市圏に住む多くの人が、地方に興味を持つことが予想されます。その際に、受け入れる地域の側にはどのようなマインドを持ってほしいと思われますか。

鳥塚: 自分たちが住んでいる地域を良いところだと思うことです。それしかないと思います。コロナ禍では都会からの観光客は来ないですよね。当社のリゾート列車の「雪月花」も運休しています。この間、何をしているかというと、地元の人たちに乗ってもらって、列車の中でお酒を飲んで食事をしてもらうイベントを開催しました。参加した人は、地元のお酒を飲みながら山の景色を見て「良いところだね」と必ず言います。

 小学校の宿泊合宿でも「雪月花」を利用してもらいました。子どもたちが家に帰って「良かったよ」と話をすれば、親にも良さが伝わります。田舎には成功体験がないので、こういうことを繰り返すことが大切です。新潟県の人に、新潟県も良いところだと思ってもらう。これがコロナの時代に、地域でやらなければならないことだと思っています。

沢渡: 非常に共感します。私も昨年、天竜浜名湖鉄道を借り切ってイベントを開催しました。参加者の半分は地元の方でしたが、乗ったことがない人がほとんどで、景色の良さに感動していました。他の地域から参加した人が喜んでいる姿を見て、地元の人は誇らしい気持ちにもなります。この化学反応がすごく大事だなと思いました。これは鳥塚さんの背中を見て教えてもらったことですね。

鳥塚: ありがとうございます。

沢渡: 地域も企業も、これまでのマネジメントは統制型、ピラミッド型でした。しかし、少子高齢化がさらに進むこれからの時代には、従来のマネジメントでは問題の解決が難しくなると思っています。今後は地域の人材と他の地域の人材をオープンに掛け合わせて、お互いにないものを補うことによって、地域の問題解決ができるのではないでしょうか。

 そのためには、今までの当たり前で価値基準を決めないことですね。地方だから給与レベルが低くて当然とか、地方だから面白い仕事がなくて当然とか、仕事はつらくて当然とか、そういう価値観からどんどん自由になるべきです。考え方も発想もオープンにしながら、良い地域をつくり、他の地域のファンを増やしていく。こうしたマネジメントが地域を救い、日本を良くすることにつながると、鳥塚さんの話を聞いてあらためて感じました。

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脱東京や移住ブームで、今後も都市圏に住む多くの人が、地方に興味を持つことが予想される(写真提供:ゲッティイメージズ)
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