障壁だらけのデンマークで、共同創業した20代建築家。生き残る経営戦略は:若手登竜門で優勝(4/5 ページ)
プロフェッショナルがひしめくデンマークで、26歳の若さで設計事務所を立ち上げた、2人の日本人がいる。当時、技術も経験も足りなかった2人は、世界の競合と渡り合うためにどうやって戦ったのか。
あえて「日本人」を武器にしない戦略
独立後は、現地の日本食レストランの内装設計も手掛けた。日本で木造住宅に用いる畳割りの寸法と、カーブが特徴的な北欧の家具デザインの要素を融合させ、2カ国の文化が絶妙に混在した空間をつくり出した。
日本人が見ると「北欧」らしく、デンマーク人が見ると「日本」らしいと言われる。日本人のアイデンティティを持ちながら現地で暮らす2人だからこそのデザインにも思えるが、こういった依頼は本意ではないと2人は語る。
「私たちは、日本人らしさをあえてウリにしないカルチャーミックスの建築にこだわっていて、過去のプロジェクトは各国のデザイナーとコラボレーションしてつくり上げてきました。そんな中で日本食レストランの発注をいただいたのは、パン プロジェクツの建築スタイルに魅力を感じたからというより、“日本人である”という点への期待があったことは否定できません」(八木氏)
「僕らは日本人でありながら、異国のコペンハーゲンで設計をしている。まず海外を舞台にしている自分たちの存在意義を肯定できないと意味がないと思ったので、多様性をキーワードに『パン プロジェクツ』と名付けました。英語の接頭詩“pan-”が意味する『多様な文化、人々、出来事』などを1つの作品に構築(デサイン)していくような事務所を目指しています」(高田氏)
日本人としてではなく、建築家として評価されたい。現地にもっと入り込みたい。2人のその思いは、パビリオンに注力する独自の戦略にも現れている。規模が小さいパビリオンは、ホテルやレストランといった大型案件に比べれば単価は安い。けれども、1つの建築に爆発力があり、コンセプトを閉じ込めて都市に広く発信する可能性を秘めている。
「デンマーク人のプロダクトデザイナーとコラボしたこの『Tea house Ø』は、まさにコペンハーゲンという都市にもっと深く関わりたいという願いがカタチになった作品。現地では、運河を中心とする水上空間が都市部の人々のアクティビティの中心地になっています。水が生み出す自然現象の美しさを空間でより豊かに表現することを試みた点が評価され、デンマーク芸術財団の支援を受け、カタチにすることがかないました」(高田氏)
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