障壁だらけのデンマークで、共同創業した20代建築家。生き残る経営戦略は:若手登竜門で優勝(3/5 ページ)
プロフェッショナルがひしめくデンマークで、26歳の若さで設計事務所を立ち上げた、2人の日本人がいる。当時、技術も経験も足りなかった2人は、世界の競合と渡り合うためにどうやって戦ったのか。
異国で生き残るためのビジネスパートナー
デンマークには現地で活躍する日本人建築家は多数存在するが、日本人のみで事務所を設立したのはパン プロジェクツが初となる。「CHART ART FAIR」の副賞として現地の建築界の大御所によるメンターシッププログラムが得られたため、彼らのサポートを受けて若手ながらも事務所設立にこぎつけることができたのだ。
とはいえ、高福祉のデンマークは北欧の中でも特にビザ取得の条件が厳しい。外国人起業家が法人を設立し、居住ビザを取得するのは相応の苦労が伴う。取得できたとしても、コンスタントに仕事を受注し高い税金を納付しなければならない。
「僕らがコペンハーゲンで創業するためには、お互いの存在が必要不可欠だったんです。僕は現地で大学院を卒業した関係で、卒業後2年間は現地で自由に働ける居住ビザが降りていました。ただ、1人では実力も人脈も人手も不足している。そこで八木というビジネスパートナーができたことで、1人ではできない領域に挑むことができるようになったんです」(高田氏)
「一方、私はワーキングホリデービザで渡航したため、期限が切れる前にワークビザを取得しないと働けない状態でした。運良く現地の設計事務所、Albjerg & Buchardtに雇ってもらいビザを取得できましたが、このビザでは自身の事業はできません。そこでパン プロジェクツとしての売り上げはすべて高田に入れて、私はボランティアで活動を行い、実績を溜める道を選びました」(八木氏)
そのため、高田氏はパン プロジェクツの事業に100%フォーカスし、八木氏は勤め先での仕事を終えた後、17時から高田氏と合流して活動を続ける生活を約2年半送った。デンマーク企業の大半は残業がなく、17時を過ぎるとオフィスが一気に静まり返るほどワークライフバランスが良い。この環境が事業成長を後押ししてくれた。
「自身の事業だけに集中したいもどかしさもありましたが、現地企業で働いてこそ得られるスキルや情報が自社の成長にもつながったのはメリットでした。私が抜けてしまうぶん、高田が事業を前進させてくれたことにも助けられました」(八木氏)
ギブアンドテイクのビジネスパートナーがいたからこそ、2人は異国でのあらゆる問題を解決して事業を軌道に乗せることができたのだ。
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