障壁だらけのデンマークで、共同創業した20代建築家。生き残る経営戦略は:若手登竜門で優勝(2/5 ページ)
プロフェッショナルがひしめくデンマークで、26歳の若さで設計事務所を立ち上げた、2人の日本人がいる。当時、技術も経験も足りなかった2人は、世界の競合と渡り合うためにどうやって戦ったのか。
北欧建築家の登竜門で初優勝できた理由
スリランカの有名建築家ジェフリーバワ氏に憧れ、建築の道を志した高田氏と両親ともに建築家の家庭に生まれ育ち、自然とこの世界に導かれた八木氏は、2016年にコペンハーゲンで出会い、意気投合。「一度、コラボレーションしてみよう」と挑んだカナダのパビリオン設計のコンペで、ファイナリストに進出された。惜しくも優勝は逃したが、互いへの信頼や未来の手応えを得られた。
翌17年、再挑戦の場として選んだのが、北欧の若手建築家にとって登竜門と言われるデンマークの芸術祭「CHART ART FAIR」。北欧最大の難関コンペにもかかわらず、2人は「日本人として初優勝」という名誉を飾ったのだ。
「この年のテーマは『リビングシティ』で、都市の発展を祝福することとサステナブルという相反するような2つをかけ合わせた設計が求められました。一般的なパビリオンは30年ほど耐えられる材料を使うのが常識ですが、フェアが3日間限定であることに目を付け、期間中だけ耐えうる素材として古紙をメインの材料に選びました」(高田氏)
イベントのチラシや雑誌など都市の人々の活動は紙に表象されることから、それを利用することで、“コペンハーゲンらしさ”を表現。さらに、世界中のどこにでも移築可能な構造体を採用した。
「その都市の紙を使って各地にパビリオンをつくれば、都市の色や文化をそのまま表したような建造物になる。古紙は短期間のパビリオンに適した耐久性の材料であり、解体後はリサイクルができる。これが私たちのアイデアでした」(八木氏)
当たり前の概念を壊し、遊び心を感じられる建築手法の発想と、都市のあり方を映し出す古紙をまとったデザイン。それらが評価されたのではないかと彼らは話す。結局、期間中は雨が降らなかったため古紙が破れることはなく、美しい姿のままコペンハーゲンの美術館「Kunsthal Charlottenborg」に買い取られた。
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