ウォルマートの「西友切り」は遅すぎた? それなのに今、楽天が西友とタッグを組むワケ:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
ウォルマートが保有する西友株式の85%を手放す。売却する株式のうち20%は、新会社を通じて楽天が取得するという。長らく伸び悩む西友だが、あえて今、楽天がタッグを組む理由とは?
小売大手の米ウォルマートが、10年以上持ち続けた西友株式のうち、85%を売却することになった。20%はネットスーパー事業の提携先である楽天が、65%は米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が持つことになるという。15%の持ち株は残すが、実態は新たな株主による企業価値向上で、投資回収を少しでも多くするための保有であるといえる。今後恐らく、ウォルマートが日本における店舗小売ビジネスに関心を示すことはないだろう。彼らの日本攻略は「失敗」に終わったのであり、“敗戦処理”が終わったら撤退して、回収した資金は自社のECインフラ投資の足しにでもするはずだ。
「グローバルリテーラーでも攻略できない日本市場の特殊性」といった話題はマスコミでは王道らしく、日本の流通構造の特殊性として問屋の存在や、独特の生鮮流通加工の仕組みなどが世界の巨人をも阻む、といった元寇・神風的な論調が期待される向きもあるようだ。確かに、そうしたハードルは存在していて、多くのグローバルリテーラーを追い返しているというのは事実ではある。しかし、こと西友に関する悩みは、買ったときにはもう「あとの祭り」だった立地と店舗にポイントがあったと考えている。
スーパーマーケットの歴史と、西友の立ち位置
日本におけるスーパーマーケット創成期からの歴史を持つ西友は、1960年代から大きく成長を続けて、90年代ごろは、ダイエー、イトーヨーカドーに次ぐ業界3位の大手として日本を代表する小売業だった。この時代の大手スーパーは、日本にモータリゼーションが普及する前の先行組であり、当時の繁華街であった全国各地の駅前を押さえる形で全国展開して成長を続けていった。
ところが、70〜80年代に進んだモータリゼーションで、地方都市の駅前はすっかり衰退するようになり、地方駅前立地の大手スーパー大型店は徐々に売り上げの低迷に悩まされるようになる。その後、バブル崩壊による消費低迷と00年代初めの金融危機の直撃を受けると、トップ企業であったダイエーを含め多くの企業が経営破綻に追い込まれたが、西友も同様の背景でウォルマートの傘下入りを余儀なくされた。
ウォルマートに経営が移る少し前の西友は、首都圏、京阪神などの大都市圏を中心としながら、北海道から九州まで、広く全国へ大型店舗タイプの総合スーパーを展開していた。そこに加えて、北海道、東北、中部、九州などにはグループ化した地場スーパーがあり、後に本体へ統合していった。つまり、ウォルマートが手にした西友という全国チェーンは、首都圏駅前の老朽化店舗網といくつかの地方にある中途半端な規模の店舗群の集合体であったといえる。
首都圏の店舗は立地のいい店も多いが老朽化も進んでおり、戦力化するには追加投資が必要となる。一方、地方の店舗群は中途半端な規模であり、各エリアの有力企業に競り勝てない。店舗閉鎖や改装投資という改革を“逐次投入”しているうちに、時間切れになったという印象だ。
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