2020年のキャッシュレス業界 けん引したのは結局クレカ(3/5 ページ)
20年のデータが出そろっていない段階ではあるものの、18年以降にキャッシュレス決済比率を押し上げたのはクレジットカードの利用増にある。PayPayが100億円規模の大規模キャンペーンを立ち上げ、いわゆるキャンペーン合戦によるシェアの奪い合いが激増したが「一番利用が多いPayPayでさえ全キャッシュレス決済の1割にも満たない」という声を聞いている。
キャッシュレスをいかに若い世代に広げるか
思えば、20年はクレジットカード関連の新サービス、あるいは新規参入が相次いだ年でもあった。
新規参入組としては、英国発祥で送金サービスを主体に若年層でのファンが多いレボリュート(Revolut)が日本での正式サービスインを果たしている。レボリュートはアプリを使った送金などのサービスに加え、残高を支払いに充てるためのICと非接触機能付きプリペイドカードを発行している。
同様のサービスは日本ではすでにKyashが提供しており、同社の発行する物理カード(Kyash Card)を利用することで常時1%還元を受けることができる。LINEは既存のVisa LINE Payカードに加え、新たにプリペイドカードの発行も開始し、クレジットカードを利用しづらい若年層にまで利用を拡大していく戦略を採っている。Revolutもペアレンタルコントロールを条件に、子ども向けに残高を使った決済が可能なジュニアアカウントと子カードの準備を国内で進めているとのことで、20年後半から21年にかけては「クレジットカードの決済システムの利用層拡大」が大きなテーマになると予想する。
実際、コロナ禍においてキャッシュレス決済は非常に重要なポジションを占めるに至った。「現金は衛生的に問題があるから」という意見もあるが、より重要なのは「店舗の営業自粛などを通して、モバイルオーダーとピックアップ、デリバリーが主要な位置を占めるようになった」という点だろう。
モバイル端末を通じたオーダーでは、端末上で決済が完結することが求められるため、オンライン決済手段としてのクレジットカードの役割が大きくなる。デリバリーアプリや各店舗がリリースするオーダーアプリと提携して、決済手段にアプリの残高を利用できる仕組みをPayPayが提供するようになるなど、20年前半は各社のコロナ対応が顕著になったタイミングでもあった。また、コンサートやライブがコロナを理由にオンライン開催に急きょシフトした関係で、ストリーム中継を見るための決済手段にクレジットカードが要求されるようになり、オンライン決済可能なプリペイドカードを紹介し合う様子が20年上旬ごろにソーシャルネットワーク上でよく見られた。
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