2020年のキャッシュレス業界 けん引したのは結局クレカ(4/5 ページ)
20年のデータが出そろっていない段階ではあるものの、18年以降にキャッシュレス決済比率を押し上げたのはクレジットカードの利用増にある。PayPayが100億円規模の大規模キャンペーンを立ち上げ、いわゆるキャンペーン合戦によるシェアの奪い合いが激増したが「一番利用が多いPayPayでさえ全キャッシュレス決済の1割にも満たない」という声を聞いている。
前述の「2025年までにキャッシュレス比率40%」を達成する文脈において、政府や関係者らの継続的な取り組みが重要と書いた。20年にかけてのポイント還元施策がキャッシュレス利用可能店舗を増やすことを主眼に置いていたとしたら、次のステップは利用者を増やすことにある。
各社のキャッシュレス決済利用傾向データを見ると、日本におけるキャッシュレスの中心は30〜40代のビジネスマン世代で、この層が日本のキャッシュレス決済比率を支えている。一般に「高齢者ほどキャッシュレスと疎遠」という認識があるが、楽天EdyやWAONといった電子マネーサービスを提供する事業者にヒアリングしたところ、「地方では経済圏が固定されており、小銭の扱いを嫌がる高齢者を含め、地方ほどキャッシュレス利用が多い」という話を何度か聞いた。普段使いのスーパーが電子マネーやそれにひも付いたポイントプログラムを導入していれば、皆進んでキャッシュレスを利用するというわけだ。
一方で、10〜20代の若年層や女性などを中心に、クレジットカードやプリペイドカードをあまり利用しない層が一定以上存在するという話も聞いている。「25年までにキャッシュレス比率40%」達成のカギの1つは、こうした層をキャッシュレスへと誘導する施策ではないかと考える。
その1つは若年層での利用も多いVisa LINE Payのプリペイドカードだが、クレジットカードの中心が20代後半以降と考えれば、それ以下の層をカバーできるプリペイドやデビットカードの存在は重要となる。こうした層はスマホネイティブでもあり、モバイルアプリと物理カードを組み合わせて手軽で便利に利用できる仕組みを提供することが、キャッシュレス人口拡大、ひいては新しいビジネスチャンスにつながる。
関連記事
- LINE PayがiD対応で「プラットフォームの完成形」 還元一本槍から体験の勝負へ
LINE PayがVisaブランドのバーチャルプリペイドカード(LINEプリペ)の発行を開始した。LINEアプリ内から即時発行でき、iD加盟店での決済に利用できる。これにより、コード決済、クレジットカード、モバイルのiD決済という、主要な決済手段がそろったことになる。「これで、決済のプラットフォームとしては完成を迎える」(LINE Pay) - 残高に年利1%の利息提供 新たな形の銀行目指すKyash
フィンテック企業のKyash(東京都港区)は12月1日、銀行口座などから入金した残高に対して年利1%の利息を付与するサービスを12月8日から始めると発表した。付与されるのは、Kyashバリューで現金引き出しは行えない。 - 現金派の人がキャッシュレスに移行しない理由とは? 過半数が「今後も現金払い」
キャッシュレス還元策からコロナ禍を経て、多くの人がキャッシュレス支払いに移行しつつある。一方で、現金払いを続ける人も数多い。その理由はいったいなんなのか。カードレビュードットコムが、現金払い派の人にアンケートを実施した。 - なぜ? “完全キャッシュレス民”の実態とは
現金大国といわれる日本だが、昨今のキャッシュレス推進策により、キャッシュレス決済は急速に普及を始めている。「まねーぶ」が10月に行った調査によると、キャッシュレス決済を利用したことがある人は96%、うち7.5%は現金利用一切なしの「完全キャッシュレス」だった。 - QRコード決済市場規模、1兆8369億円に急伸 24年には10兆円超
矢野経済研究所は12月24日、国内QRコード決済市場の調査結果を発表した。2019年度は、市場が本格的に立ち上がり、加盟店手数料無料化や大型キャンペーン、政府のキャッシュレス還元などの結果、取り扱いベースで1兆8369億円と推計した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.