2020年のキャッシュレス業界 けん引したのは結局クレカ(5/5 ページ)
20年のデータが出そろっていない段階ではあるものの、18年以降にキャッシュレス決済比率を押し上げたのはクレジットカードの利用増にある。PayPayが100億円規模の大規模キャンペーンを立ち上げ、いわゆるキャンペーン合戦によるシェアの奪い合いが激増したが「一番利用が多いPayPayでさえ全キャッシュレス決済の1割にも満たない」という声を聞いている。
また面白いポテンシャルを持つのがメルペイだ。メルカリ利用者の半数以上が女性ということもあり、このアカウント残高を決済に利用するためのさまざまな仕組みをメルペイは提供している。コード決済やApple Payに登録してのiD払いは店舗でのメルペイ残高を使った決済サービスだが、メルペイスマート払いでは翌月払いを可能にする。
通販などの世界では、クレジットカードでオンライン会計は行わず、請求書払いで自分の好きなタイミングで支払いを行う文化がある。一般に請求期限は半月ないし1カ月程度で、金額も多くて数万円程度だが、こうした支払い方法を選択する利用者が女性に多いと聞く。「ほしいものがあったら、とりあえず買える範囲の金額で買ってしまい、あとで期限までに支払おう」という考えからくるもので、特にフリマアプリのように「即決性」を要求される仕組みと、翌月一括支払いのメルペイスマート払いとの相性がいいというわけだ。
20年にはさらに一括払いではなく、月々一定額の支払いで利息を支払う仕組みも用意され、クレジットカードに近い使い方が可能になってきた。「クレジットカードを使うのは嫌だけど……」という層にとってのキャッシュレス窓口になっており、非常に面白い傾向だと思う。
このように足回りが整備されつつあるキャッシュレスの世界だが、業界の根底を見直す動きもあり、さまざまな思惑が見え隠れしている。次回は20年に起きた事件を振り返りつつ、金融機関と政府の思惑、21年以降の業界展望について見通していきたい。
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