2021年のキャッシュレス業界 銀行の逆襲が始まるか(3/6 ページ)
国内では依然としてクレジットカードがキャッシュレス決済の大部分をけん引する。一方で、クレジットカードだけではカバーできない層にまで浸透する新しい決済手段としてスマートフォンを使ったコード決済やアプリ決済が登場し、ニーズの隙間を埋めつつ、従来の決済インフラでは現金利用が中心だった層においてもキャッシュレス経済圏を拡大すべく市場が広がりつつある。
例えば英国発祥で海外送金サービスを提供するトランスファーワイズ(TransferWise)、21年以降に日本での活動を本格化する。もともと日本市場への進出はアジア地域でも最も早かったが、現在までのところ他地域では提供している物理カードなどの発行を行っていない。同社では21年の資金決済法改正案が施行されるタイミングに合わせ、これまで保留していた日本での各種サービスを本格投入していくことになる。
海外送金は「処理が煩雑」「送金に時間がかかる」「手数料は目的の口座に到着するまで分からない」「途中で送金に失敗するケースもある」という形で、多くの顧客にとって悩みの種を多数抱えるサービスだった。
だがトランスファーワイズの登場や、ウェスタン・ユニオン、マネー・グラムといった古くからの事業者らの新サービス投入により、これら問題の多くは解決され、以前に比べると海外送金のハードルはだいぶ下がった。海外送金という仕組みはマーネーロンダリングの懸念もあり、もともと「手間の割にもうからない」という評価が高かった。そのため、日本の銀行も海外送金には本腰を入れてこなかったという歴史がある。
一方で、海外送金を最も頻繁に利用するユーザーは「出稼ぎ労働者」ともいわれており、ある意味で海外送金の活発さがそのまま経済状況のバロメーターにつながっているとも考えられる。日本における海外送金サービスは東南アジア方面のものが多かったが、それも出稼ぎ労働者を対象としていたことに起因する。
トランスファーワイズに限らず、資金移動業者でユーザー間送金サービスを提供する事業者は多い。海外送金とはいわずとも、仲間内での支払い代行や割り勘、パーティーの会費徴収など、ちょっとした送金用途はさまざまある。
だが面倒なのは、1対1での送金はともかく、割り勘や会費徴収などを行う場合、徴収元のユーザーがそのサービスを利用していなければ、別のサービスを組み合わせる必要があったり、結局現金で集めるといった形でかえって煩雑になったりしまうことだ。こうした場面では、皆が送金に利用できる共通サービスのようなものがあれば便利だ。現在、こうした少額送金サービスがいまいちブレイクしない理由に、「共通の送金メソッドがない」ことが原因だと考えている。資金移動業のカテゴリが3分割されたことで、より自由度が高く、手軽に送金できるサービスが登場し、改めて「送金」が注目を集めることに期待したい。
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