2021年のキャッシュレス業界 銀行の逆襲が始まるか(4/6 ページ)
国内では依然としてクレジットカードがキャッシュレス決済の大部分をけん引する。一方で、クレジットカードだけではカバーできない層にまで浸透する新しい決済手段としてスマートフォンを使ったコード決済やアプリ決済が登場し、ニーズの隙間を埋めつつ、従来の決済インフラでは現金利用が中心だった層においてもキャッシュレス経済圏を拡大すべく市場が広がりつつある。
年明けは銀行の逆襲が始まるか
資金移動業というカテゴリが「決済代行」という目的からスタートしたように、もともとは電子取引時代における銀行の足回りを強化し、法的根拠を与えて資金を保全しつつ、その取引を活発化させることが狙いにあった。
ただ、当初10年に成立した資金決済法で定義される資金移動業とは、あくまで銀行業務の補助的な意味合いが強いもので、前述の送金額制限のようにビジネス的な枠組みも限られていた。「銀行免許の取得は負担が大きいため、資金移動業でできる範囲のビジネスを組み立てる」という形で参入してくる事業者は多く、ある意味で銀行とはすみ分けができていた。だが前述のように21年以降は送金サービス参入のハードルが下がると予想されることで競争が促され、銀行は送金手数料引き下げなど、経営上のリスクが懸念されることになる。
現在、銀行はさまざまなサービスから収入を得ている。大枠では2つのカテゴリがあり、1つは貸し出した資金の金利収入、もう1つは金融サービス提供による手数料収入だ。基本的に銀行では預金を集め、それを融資して金利を得たり、金融商品を購入して運用したりすることで収益としている。預金者には対価として資産を保全しつつ、ATMを使った資金引き出しや引き落とし、振り込みなどのサービス提供を行う。
近年では口座維持手数料を定期的に徴収したり、ATMの利用や振り込み(送金)などの仕組みでも条件に応じて課される手数料が増えていたりするが、各種金融商品の販売と合わせ、これらから得られる手数料収入もまた銀行の営業利益となる。ただし昨今の低金利時代、預金の運用は非常にシビアな問題であり、前段の説明にもある新規事業者の参入にあたって手数料の収入源も絞られつつあるのが現状だ。
こうした背景もあっての冒頭の菅総理の「地銀再編」発言だが、各行とも生き残りの決め手はなく、暗中模索状態のようだ。19年から20年にかけて複数の地銀関係者にヒアリングを行ってきたが、ユーザーがスマートフォンを使った決済に向かうのは時代の流れとしつつ、そこからどのように収益を得ていくのかは大きな課題だ。
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