2015年7月27日以前の記事
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2021年のキャッシュレス業界 銀行の逆襲が始まるか(5/6 ページ)

国内では依然としてクレジットカードがキャッシュレス決済の大部分をけん引する。一方で、クレジットカードだけではカバーできない層にまで浸透する新しい決済手段としてスマートフォンを使ったコード決済やアプリ決済が登場し、ニーズの隙間を埋めつつ、従来の決済インフラでは現金利用が中心だった層においてもキャッシュレス経済圏を拡大すべく市場が広がりつつある。

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 例えば横浜銀行では「はまPay」というQRコードを使ったコード決済のためのアプリを提供しており、横浜銀行の口座と直結しているため同行ユーザーであれば手軽に利用できる。この「はまPay」はGMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)が提供する「銀行Pay」に参加している加盟店であれば、日本全国どこでも利用できるものだが、実際のところエリアをまたいで利用されるケースは少ない。

 「どちらかといえば神奈川県エリアの小売店のキャッシュレス対応や送客支援に近い」と横浜銀行では銀行Pay参加の狙いを説明する。同行ではむしろ「はまPay」アプリそのものの利便性を向上させて利用者を増やす戦略を練っているようで、今年8月にはアプリに「iD」による非接触決済機能が付与され、利用できる店舗が一気に拡大した。同行では東急電鉄と提携してATMの代わりに券売機で「はまPay」アプリを使って預金の引き出しができるサービスも提供しており、将来的に1台あたり年間数千万円といわれるATMの維持コストを削減していき、モバイル決済と地元小売店支援による経済活性化を通じて収益を増やしていく考えだ。


「iD」に対応した横浜銀行の「はまPay」アプリ

 「決済」や「モバイル」を収益向上のトリガーと考える地銀関係者は多い。例えば観光などのサービス産業が中心の沖縄では、琉球銀行がクレジットカードのアクワイアリング事業を積極的に推進し、地元のキャッシュレス化を推進しつつ収益を増やしている。

 また横浜銀行と並んで先進的な取り組みで知られるふくおかフィナンシャルグループ(FFG)では「WALLET+」と呼ばれる、FFG傘下各行ならびに提携行の銀行口座と連動して各種サービスやコンテンツ配信が受けられるミレニアル世代を対象とした施策を展開している。そして21年1月にはインターネットバンキングの新会社「みんなの銀行」のお披露目を控えている。

 これら地銀の取り組みで共通しているのは「融資なども含め地元企業を支援しつつ、若者層を積極的に取り込んで銀行サービス活用を促す」という点にある。20年までは目立たなかったが、菅総理の発言を受けたいまこそ、この動きがより活発化していくと考える。

 他方で、過去数年の取材を通じて地銀の「迷い」のようなものも多く散見された。業界全体でみれば必ずしも思惑がうまくいっているとは限らないのは、地銀関係者を対象にしたセミナーは毎回満員状態で、そこから漏れ聞こえてくる本音からもうかがえる。

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