「炎上」と「改革」で4000億円企業に コロナバブル後に真価が問われるZOZO:数字で見る2021年注目企業(3/3 ページ)
サービス開始からわずか17年で商品取扱高が約22倍以上に伸びたZOZOTOWN。急成長できた背景とコロナ禍でも成長し続ける強みを著者の磯部孝氏はこう分析する。
7000ブランドを埋没させない工夫
もう1つのグラフをご覧いただきたい。これは取り扱いブランド数と平均出荷単価をグラフにしたもので、ブランド数の増加によって購入価格のデフレ化を招いているのが分かる。これはZOZOTOWNの成長とともに生まれる現象と考えても良く、購入価格比較に敏感に反応する消費者が増えれば増えるほど、低価格化に拍車がかかる。現に新たなDtoC(=orD2C Direct-to-Consumer 実店舗を持たないネット販売に特化)ブランドの旗手として伸びている企業は、若者向けに実店舗商品に比べて安い商品がそろっている。
ファッションのネット販売のポータルサイト化したZOZOTOWNでは、検索機能の充実は欠かせない。何せ7000ブランド以上も取り扱うには、埋没させないための工夫が必要だ。好きなブランド検索だけでショッピングを終わらせてしまっては、ブランドオリジナルサイトに負けてしまう。この所帯で運営していくには参加ブランドの満足度も必要な要素となる。それが検索後に出てくるレコメンド機能の充実で、同一商品を選んだ他の人のレコメンドやランキング、類似商品や、商品特徴からの再検索などメニューは充実している。
結局、ネットリテラシーのある人にとって快適に使えるツールに仕上がっているものの、ネット慣れしていない層には情報の洪水感は否めない。これまで日本のEC市場は世帯年齢が30〜40歳代の若・中年世帯を中心に、年率約8%の勢いで拡大してきた。それでも日本のEC普及率は4割程度と欧米先進国の8割前後と比較すると、まだまだ伸びしろがあると考えてもよい。
政府発行の20年度の経済財政白書から直近のEC消費の世帯主年齢別寄与を見ても、5〜7月は60代、70代の利用が目立った。特にこの世代は団塊世代という人口ボリュームを持った世代で、今のZOZOTOWNとは直接は関係ないものの、この世代の購買スタイルの変化が、今後の日本のEC普及率に影響を与えるのは間違いない。
冒頭のグラフで示したように、08年当時の会員平均年齢は27.4歳だったのが20年でも33.6歳。12年たっても6歳しか平均年齢が上がっていない。これはEC販売というツールの特性(若年世代の方がネットリテラシーが高い)とも考えられなくもないが、ZOZOTOWN自体も、ヤングブランドを積極的に採用してきた結果でもある。
そういう意味では、19年11月にヤフーを傘下に持つZホールディングスの子会社となったことを機に出店を決めたPayPayモールは、ZOZOTOWNにとっても新しい年齢層を取り込めるチャンスになるだろう。オンライン上の出店はリアル店舗ほどの固定費は掛からず、新たな消費者との接触機会増になれば、利益こそあれ不利益に働くことはないと見る。コロナ収束明けに真の実力が問われることになりそうだ。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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