なぜ「嘘ついて出社」? 数字に縛られる管理職を変える“リモート時代のマネジメント”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
「上司が有給休暇を取得して出勤している」という、霞が関で働く人の発信が話題になった。河野大臣は罰則に言及したが、正論だけで人は動かない。今は“リモート仕様のマネジメント”教育が不可欠。社員の自律性を高め、つながりを強めるマネジメントのための投資が必要だ。
リモートだからこそ、数字よりも“定性的評価”を
では、リモート仕様のマネジメントとは何か?
「定量的評価」より「定性的評価」を重視するマネジメントです。
定量とは数値目標で、定性とは目に見えない、あるいは数値化できない業務上の貢献であり、協調性や積極性などがその代表例です。
リモートワークでは、「成果が全て」とばかりに「数字で評価する」ことにプライオリティーが置かれがちですが、実際には逆です。定性的な評価をより細やかにして、部下の精神面への目配りもより大切になります。
そもそも上司の役割とは、決して「上から降りてきた数字の達成」=マネジメントではありません。チームメンバーのやる気を上げ、彼らのパフォーマンスを最大限高めることが主たる役割です。
それは、たとえ目標とした「数字」が達成できなくても、定性と定量による分析を使い分けて、メンバーが「よし! もっとできる。自分ならできるはずだ」と、彼らの自己効力感を高められるように仕向けるスキルが必要になります。
ところが、これまで日本ではマネジメント教育にさしたる投資もせず、プレイヤーとして良い成績を上げてきた人をマネジメントに昇進させてきました。
一方、日本企業が「世界基準」とあおぐ米国では、徹底的にマネジメント教育に投資します。部下からの信頼を得るにはどうすればいいか? 部下のモチベーションを高めるには何が必要か? 面談は何を目的に行うのか? などを理解し、具体的なスキルを習得します。
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