2500人が販売待ち! なぜ1個500円の高級トイレットペーパーが売れるのか:製造が追いつかない(3/6 ページ)
1個500〜1700円弱の高級トイレットペーパーが売れていることをご存じだろうか。製造・販売しているのは「望月製紙」。手頃な価格の商品があふれているのに、なぜ明らかに値が張るモノが売れているのか。
非効率な工程が生みだす別格のやわらかさ
家庭用のトイレットペーパーは多くが12ロール入り、手頃な製品だと1パック300円前後の低価格帯で販売している。消臭機能やふんわり仕上げなど機能性に比例して価格が上がるが、長持ちするロングタイプを除けば1000円を超えるものは少ない。
望月製紙が販売する高級トイレットペーパーは、一般的な製品と比べて価格帯は10倍〜20倍以上。これほどまでに価格差が開く理由は、原料と製造工程のこだわりにあるという。
トイレットペーパーの主な原料は木から作られたパルプで、世の中には100種類以上のパルプが存在する。同社は水質のよい湖に囲まれて育った北米の純粋パルプを使用。これは、繊維が細長く強いという性質がありながら、やわらかさも併せ持つ。紙をすく製造工程で大量に使用する水は、過去に3年連続で全国の河川水質ランキングで1位に選ばれた実績がある県内の仁淀川の水を引いている。
そして、最も品質を左右するのが、原料が持つ利点を最大限に引き出す製造工程だ。大量生産されている低価格帯の製品は、パルプを強く叩解(こうかい:切りほぐしたり押しつぶしたりする作業のこと)し、機械を高速回転させて紙をすくのが一般的。効率的ではあるものの、その代わりにパルプのよさが犠牲となり、紙が強く引っ張られることで表面がツルツルの硬い仕上がりになってしまう。
一方、同社ではパルプが持つ繊維の長さややわらかさをそのまま生かすため叩解を最小限にとどめ、紙をすく工程では、なるべく力を加えずにやさしく巻き取っている。
「日々変わる気温と湿度に合わせて微妙な調整を繰り返しながら、じっくりと時間をかけて丁寧に製造する。業界の常識とは真逆ともいえる非効率極まりない製造方法ですが、この工程を経なければ究極のやわらかさは出せないんです」(森澤氏)
関連記事
- 学生需要は急落したのに、なぜカシオの「電子ピアノ」は売れているのか
新型コロナの感染拡大によって、多くの企業が売り上げを落とした。そんな中でも、「あれ? このアイテムが売れているの?」と感じる商品がある。電子ピアノだ。カシオ計算機の電子ピアノは苦戦していたのに、なぜヒットしたのか。その秘密に迫ったところ……。 - なぜ「すしざんまい」は、マグロの初競りを自粛したのか
マグロの初競りで一昨年は3億3360万円――。驚くような落札額で世間をにぎわせてきた「すしざんまい」(運営:喜代村)が、今年のマグロ初競りを自粛した。なぜ自粛したのかというと……。 - コロナ禍で売上は1.5倍! 耳をふさがない「骨伝導ヘッドフォン」は何がスゴいのか
新型コロナの感染拡大を受けて、宿泊業や外食産業は大きくダメージを受けているが、そんな中でも前年比で売り上げを伸ばしているアイテムもある。「骨伝導ヘッドフォン」だ。なぜ、この商品が売れているのかというと……。 - スーツに見える作業着は、なぜ3倍ペースで売れているのか
スーツに見える作業着をご存じだろうか。2018年、水道工事を行っている会社が発売したところ、売れに売れているのだ。多くのアパレルが苦戦している中、なぜこの商品はヒットしているのか。グループ会社の社長に話を聞いたところ……。 - 入居待ち6500人! デンマーク発のコンテナ住宅が熱望される理由
デンマークの首都コペンハーゲンに、6500人もの学生が入居待ちをしている大人気の賃貸住宅が存在する。コンテナを使った集合住宅だ。なぜコンテナ住宅に住みたいと思っている学生が多いのかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.