コンカー、経費精算の次は請求書のデジタル化へ 「デジタルインボイス構想」掲げる(2/2 ページ)
クラウド型の経費精算システム大手のコンカーが、請求書のデジタル化に向けたサービスの強化にかじを切る。同社社長の三村真宗氏は、今後4年間で3倍の販売実績を目指すとし、売り上げに対する比率も現在の10%から40%まで増やす計画だ。
LINE、インフォマートと連携
請求書のデジタル化を成し遂げるコアとなるシステムは「Concur Invoice」だ。請求書のデータを格納し、出社なしに必要な業務を実行できる。例えば、請求書番号の重複を自動的にチェックして二重支払いを未然に防いだり、社内規定や予算額をあらかじめ設定することでガバナンスを効かせたりできる。確認や承認もスマホの画面で行えるため、出社の必要がない。
ただし課題となっていたのが、請求書のデータ化だった。今回、コンカーは2つの方法で対応を進める。
1つはパートナー企業とのAPI連携だ。まず請求書の発行と受け取りを電子化する「BtoBプラットフォーム請求書」を提供するインフォマートと連携する。このサービスは国内で53万社あまりが導入しており、導入企業同士であれば紙やPDFの発行なく、請求書の発行と受け取りが行える。Concur Invoiceと連携することで、受け取った請求書データを簡単にConcur Invoiceの承認、チェック、保管、分析機能につないでいくことができる。
LINEが提供する「COLOVA OCR」とも連携する。これは請求書に特化したOCRサービスで、PDFの請求書を読み込ませると、内容や数字を認識してデータ化する。そこからボタン1つでConcur Invoiceにデータを流し込めるようになっている。紙で届いた請求書も、スキャナなどでPDF化することで読み取ることが可能だ。
さらにコンカー自身も、請求書の受け取りや入力を行うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供する予定だ。自社の代わりにBPOサービス宛に紙の請求書を送ってもらうことで、Concur Invoiceへの入力を代行する。
経費精算については、徐々にデジタル化が進んできた。2020年度の電子帳簿保存法改正で紙の領収書も不要になるなど、システム、法律の両面からデジタル化の準備が整ってきた。
請求書も23年に制度変更が控えている。消費税法の改正によるインボイス制度の導入だ。適格請求書発行事業者として登録を行い、指定のフォーマットで請求書を出すことが求められる。対応できていない請求書の場合、消費税の課税還付が受けられない。
コロナ禍をきっかけにデジタル化需要が一気に高まった請求書。今後さまざまな変化が予想される。
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