組織にはびこる“森喜朗”的価値観 女性は「よそ者」であり続けるのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
「女性がいる会議が長い」という発言は森喜朗氏に限らず、日本企業で度々耳にする。忖度で動く「タテ社会」の組織にとって、自由に発言する女性は“よそ者”。多数派が権力を行使するために排除する。この構造を変えるためには「数の力」が必要不可欠だ。
女性が多い企業は「ザワついている」
タテ社会で生き残るには、上司に「ノー」と首を横に振ることも、「それはおかしい」と反論することも許されません。「上司が好きそうな企画を出す」輩に成り下がり、社内政治に精を出し、上の人たちと頻繁に接触をし……。「タテ」で構成される組織に適応するための最良の手段が「忖度」と言っても過言ではありません。
「わきまえる」という言葉の真意はそこにあります。
一方、「組織を変えたきゃ、若者、よそ者、ばか者の視点を生かせ!」とはよく言われることですが、“よそ者”である女性には、男社会の当たり前が通用しません。男性には上司に対して首を横に振ることも反論することも許されない。でも、女性にはそれができる。おかしいことはおかしいと反論するし、分からないことは分からないから質問する。意見があれば意見を言う。それが会議です。
私はこれまでいろいろな企業に講演に呼んでいただきました。会場に女性が多い企業には共通していることがあります。「ザワついている」のです。悪い意味ではなく良い意味で、ザワザワしているのです。
上司と部下の距離が近く、無駄な緊張感が存在しません。男性だけの会場では一目で誰が上司か分かりますが、それが分からないくらい「自由にものを言う空気」が出来上がっている。
要するに、絶対的多数派である男性が築き上げてきた「男社会の当たり前」に、「女性」は新しい風を吹き込む存在であり、女性が増えれば「男社会の当たり前」は当たり前じゃなくなるのです。
ところが、その新しい風をあからさまに「否定」し、周りの人たちも追従した。そして、そういう組織が日本の至るところに、いまだに「存在」しているのです。
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