コロナで日経平均が3万円を超えても安易にバブルといえない理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)
日経平均株価指数は8日、2万9388円50銭を記録し、バブル期の1990年8月から約30年6カ月ぶりの高値を記録した。しかし、日経平均株価の仕組みからして、最高値である「3万8957円44銭」はいずれは更新されてしかるべきだ。1989年の日経平均と、2021年における日経平均は全く別の指数だからだ。
日経平均が9万6631円以上になったらバブル超え?
それでは、どのような投資指標が株価水準の妥当性を図る上で有益だろうか。この点について、今回は「日経平均PER」から確認したい。
日経平均PERとは、日経平均採用銘柄の各社におけるPER(株価 ÷ 1株あたり純利益)を平均化したものである。簡単にいえば、PERの倍率は投下した資本が何年で回収できるかを示す指標でもある。そのため、構成銘柄が違っていても指数における加熱度を比較することができる。
足元で算出された日経平均PERは24.34倍である。実は、この24倍という数字は歴史的に見てもかなり高い部類にある。少し前までの市場関係者の感覚でいえば、日本株におけるPERの相場は14倍だ。つまり投資した資金が純利益ベースでみると14年ほどで回収できるものが24年かかるようになったというイメージだ。それではこの水準はバブルといえるのだろうか。
まずは“米国版日経平均”というべき、「ダウ平均株価」と比較したい。ダウ平均のPERは足元で31.47倍、そして平時では20〜25倍程度で推移している。ここからみると、足元の日経平均株価指数におけるPERは平時の米国市場並みといえることになる。
次にバブル期のPERは何倍だったのだろうか。バブルの絶頂期、日本株の平均PERはおよそ80倍だったという。現在相場の加熱度は高まっているとはいえ、PERという投資指標ベースでみるとバブル相場の足元にも及んでいない。仮にコロナ相場が、先のバブル絶頂期と同じということであれば、日経平均株価は9万6631円になっていないと辻褄(つじつま)が合わない。
明らかに異常な株価水準であると思うかもしれないが、物価の変動をはじめとした年代によるさまざまな要因をPERの観点から“補正”すると、今の感覚でいえば日経平均が9万6000円程度になって初めて”バブル超え”というべきなのである。
関連記事
- アフターコロナは「バブル一直線」? 上昇止まらない株価
足元の景気動向は、コロナ前と同じレベルまで回復しているとはとても言い難いなか、日経平均株価の反転攻勢が止まらない。6月3日の日経平均株価は2万2613円と、コロナ前の水準まで回復した。その背景には、コロナ禍中の緊急的な金融政策の存在が大きいと考えられる。 - 米ゲームストップの暴騰・暴落劇 裏側で親たちに利用されるジュニアNISAの惨状
ここ1カ月で20倍近い急騰を遂げた米国のゲームソフト小売大手チェーン「ゲームストップ」の株価が暴落している。この銘柄は、ジュニアNISA口座を使って“ギャンブル”にも使われたようだ。 - “熱狂なき価格上昇”のビットコイン、いち早く“バブル超え”を果たせた理由
約3年前、ビットコインは“終わった”と思われていた。しかし、足下ではそんなビットコインバブルの最高値230万円台をさらに100万円以上も上回り、1BTC=382万円で推移している。しかし、今年のビットコイン相場では、17年末から18年初頭に見られたような熱狂がそこにはない。熱狂なき価格上昇により、ひっそりと高値を更新し続けている。 - 「ドコモ除外、シャープ追加」の日経平均、指数への影響は?
日経平均からドコモが除外され代わりにシャープが追加となる。ドコモといえば、時価総額12兆円の超巨大企業であるが、シャープの時価総額は7500億円程度と、そのサイズは10分の1以下だ。ドコモを代替する銘柄として、シャープを組み込むことに悪影響はないのだろうか。 - 円安・株高の関係が終わりを告げる? 外貨預金も金利悪化
ワクチン開発から株価上昇が続くなか、これまでの常識が通用しなくなりつつある市場も存在する。為替市場だ。アベノミクス始動から半ば常識となっていた「円安株高」が、このワクチン相場では通用しない状況になっている。今の状況は「円高株高」となっているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.