コロナ禍なのに、なぜ「起業」が世界で急増しているのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
新型コロナの影響が長引き、世界的に経済が低迷している。そんな中、小規模ビジネスを新たに立ち上げる動きが活発だ。米国やフランスなどで起業数が急増。コロナ禍の新たな需要を取り込もうとする動きも多い。これまでなかった発想のビジネスも生まれている。
米国では起業が24%も増えた
例えば米国では、新たな小規模ビジネスが記録的なレベルで立ち上がっている。米経済イノベーショングループの調査によれば、20年は起業数が前年比で24%も増えている。その数は10月だけで少なくとも60万件に上る。
米国の場合は、失業したり、契約が中断したりしたことで個人に時間ができたために、ちょっとした飲食店を始めるといったフリーランスの働き方が増えたためだという側面がある。現時点で1000万人もの労働者が失業中で、雇ってもらえないのなら自分でやっちゃおうということらしい。
特に増えているのは製造関係とレストラン、そして小売業。新たなビジネスの3分の1がオンラインで営業できてしまうものだという。こうしたビジネスを起業することで、コロナ禍で失った収入を埋めようとしている人たちが米国では増えているのだ。
ただ、こうした小規模ビジネスには厳しい現実がある。米国では、起業して従業員を持つようになる新しい会社は、5年以内に倒産する可能性が5割という統計がある。立ち上げるまではいいが、事業を広げていくと生き残る可能性は低くなるということだ。
また米国では、新型コロナのワクチンが普及するにつれ、コロナ禍の出口が見え始めることを見越した楽観論もあって起業する人が増えているとも見られている。だが変異株など不確定要素もあるために、その出口も慎重に見定めなければならない。まだ楽観できる状況ではないのだが。
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