コロナ禍なのに、なぜ「起業」が世界で急増しているのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
新型コロナの影響が長引き、世界的に経済が低迷している。そんな中、小規模ビジネスを新たに立ち上げる動きが活発だ。米国やフランスなどで起業数が急増。コロナ禍の新たな需要を取り込もうとする動きも多い。これまでなかった発想のビジネスも生まれている。
映画館もこれまでにないサービスを展開
こうした個人の起業といった取り組み以外にも、既存のビジネスで生き残りのために新たなサービスを始めているところも、もちろんある。最近話題になっていて、筆者が興味深いと思ったのが、映画館の貸し切りビジネスだ。
米テネシー州に本社がある映画館のチェーンでは、新型コロナで以前のように映画館をオープンできないために、新たなサービスを始めている。
この映画館「マルコ」は、テネシー州をはじめ、アーカンソー州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピー州、ミズーリ州など36カ所に映画館を展開している。スクリーン数は371にも上る。
この映画館では、新型コロナでソーシャル・ディスタンスを守るなど、以前のように開店できないために、スクリーンのレンタル事業を行っている。「マルコ・セレクト」と呼ばれるこのサービスでは、映画のスクリーンを貸し切りにできる。料金は2時間100ドルで、3時間なら150ドル。一度に20人まで入ることができる。ただ経営側としてはあまり利益にはなっていないようだが、人気はあり利用者は増えているという。
大手の映画館「AMC」なども同様に、小規模のグループへのスクリーン貸し切りサービスを行っている。
このサービスは、韓国でも人気になっている。韓国の場合は、1人で200人規模のスクリーンを借り、大スクリーンでテレビゲームができるサービスになっている。かなり高音質、大音量でゲームが楽しめるということで人気になっている。昼は2時間で9500円程度、夜は1万4000円程度だという。
映画館大手「CGV」が展開しているのだが、新型コロナで映画館の動員が見込めず、新作映画も少なくなっていることも背景にはある。
新型コロナは、新たな起業をもたらしたり、米国や韓国の映画館のようなこれまで想像できなかったサービスを生み出したりしている。そんな経験を乗り越えたビジネスパーソンたちが、コロナ禍の出口の先でこれまでとは違った発想を生み出すのを期待したい。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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