映画「えんとつ町のプペル」を大ヒットに導いたオンラインサロンは信者ビジネスなのか?:専門家のイロメガネ(3/5 ページ)
映画「えんとつ町のプぺル」がヒットした背景には、西野氏が率いる「オンラインサロン」がある。7万人以上が参加するオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」は映画のヒットにも寄与したといわれているが、サロンを活用した集客・マーケティングは賛否も呼んだ。このオンラインサロンの実態とは?
オンラインサロン運営のメリット
こういったサロンビジネスのメリットに注目している企業もあり、筆者はそんな企業からオンラインサロンを運営したいといった相談を受けることもある。
オンラインサロンを運営する魅力は、何といっても継続的な売り上げを得られる仕組みと手軽さにある。参加者は毎月参加費用を支払い、退会しない限り、継続的に売り上げが発生するからだ。
一方で運営コストは、一般的なファンクラブや会員制度と比べてはるかに低い。現行のオンラインサロンの多くが、Facebookの非公開グループを活用したクローズドなコミュニティの形をとっている。このやり方ならば初期投資はゼロから始めることも可能だ。
「西野亮廣エンタメ研究所」の場合、月額980円で加入者は7万4000人(Facebookグループの参加人数より)。この全てが課金者だとすると、毎月の売り上げは7000万円を超える。ここから、決済の手数料や運営のための人件費等が引かれるが、これだけの売り上げが毎月継続的にあがるのだ。
加えて、顧客との関係を強化できるオンラインサロンはビジネスに役立つことは間違いない。では実際のサロンはどのようなタイプがあるのか?
オンラインサロン、3つのタイプ
オンラインサロンは「ファンクラブ型」「スキル/知識習得型」「同業者コミュニティ型」の3つに大別される。
「ファンクラブ型」として分かりやすいのが、芸能人やインフルエンサーが主宰しているものだ。オンラインサロンというとこの「ファンクラブ型」をイメージされることも多い。
先に挙げた「西野亮廣エンタメ研究所」をはじめ、堀江貴文氏の「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」(月額1万800円 約1100人加入)、ビジネスYouTuberとして人気を集める鴨頭嘉人氏の「Team Kamogashira Japan」(月額3000円、約700人加入)などがある。
ファンクラブ型のオンラインサロンは、サロン主である主宰者の情報にこそ価値がある。シンプルに「◯◯さんのことが知りたい」という人が参加するコミュニティだ。極端な例だが「今日食べた焼き肉が美味しかった」という話でも、オープンなSNSで語られていない情報は喜ばれる。
そんな情報にお金を払うなんてくだらない、搾取じゃないか、という人もいるだろう。しかし、タレントや有名人がSNSで近況報告をすることは珍しくなく、ファンにとっては意味のある情報だ。あくまで対象としているのはファンである。
もちろんこれらのサロン内では、それぞれの分野についての有意義なコンテンツ配信もされているが(後述するスキル/知識習得型としての要素)、彼らの圧倒的な影響力にお金を払っている参加者も少なからずいることは間違いない。
オンラインサロンのありがちな失敗例としては、主宰者がそれほどの求心力を持ち合わせていないにもかかわらず、個人の感想や、今日食べたものの話など日記レベルの発信をしてしまうことだ。手軽に月額課金を生み出せる一方で、飽きられてしまえばすぐに退会されるのもオンラインサロンの特徴の1つだ。
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