リモートワークは絶対正義か 非リモート企業への「ブラック」批判が的外れなワケ:働き方の「今」を知る(1/4 ページ)
リモートワーク企業が増えているが、その一方で非リモートワーク企業への風当たりも強くなっている。中には「リモートワークできるのに、させてもらえない企業はブラック」という批判も耳にする。しかし、それは本当に正しいのか。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、わが国の経済情勢と労働環境は劇的に変化した。2020年4〜5月にかけて発出された緊急事態宣言下において、不要不急の外出が抑制された結果、「宿泊」「飲食」「娯楽」関連企業の業績は大きく低下。一方で「通信」関連業はリモートワーク、会議や授業のオンライン化、ネット通販などの需要増大によって業績は好調なようだ。
また、リモートワークは3密を避けるためにも有効ということで、西村経済再生担当大臣が経済界に対して「テレワーク70%・時差通勤」を推奨するなど、国を挙げて積極的な活用が推し進められている。日本生産性本部の調査によると、一度目の緊急事態宣言発令中におけるリモートワーク実施率は31.5%だった。その後、解除に伴って一時的に2割弱まで低下したが、21年頭に発出された緊急事態宣言発令によって21年1月には再度22.0%まで上昇している。
ただしこの数字はあくまで全国平均であり、リモートワーク実施率が高い大企業が多く位置する1都3県だけを抽出すると、20年5月が41.3%、2021年1月は32.7%となっている。この間に実施した二度の調査(20年7月、10月)が行われた際もおおむね3割前後の実施率であり、リモートワーク可能な職種があくまで事務的なオフィスワーク中心であることを考えると、この「全国平均2割、首都圏3割」という数字が、現実的なリモートワーク実施率の落ち着きどころであると考えられるだろう。実際、二度目の緊急事態宣言が発出されても、大都市圏における朝の通勤ラッシュの様子は、ウイルス感染拡大前と比してさほど変化は見られなかったようだ。
もちろん、生産工程の仕事や医療・インフラ関連、運送系や現業系など、そもそもリモートワークに適さない職種は存在する。しかし一方で「リモートワークをやろうと思えばできる業態や職種のはずなのに、出社を要求する会社」もまた大小問わず存在しており、「リモートワークできるのにさせない経営者なんて怠慢だ」「前回の緊急事態宣言から時間もたち、リモートワークができるよう準備をする余裕が十分あったはずなのに、いったい何をしていたのか」との批判がなされている。
一部では「リモートワークさせない会社はブラック企業で確定」といった厳しい意見もあるようだが、果たして「リモートワークできるのにさせない会社」は、これからの時代に対応できない、断罪されるべき問題企業なのだろうか。
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