中小企業も適用迫る同一労働同一賃金、「対応済み」は3割 “不合理な待遇差”の判断に悩みも:4月から施行
エン・ジャパンが実施した中小企業の人事担当者への調査によると、4月に中小企業にも適用される「同一労働同一賃金」について、すでに対応が完了している企業は約3割にとどまった。“不合理な待遇差”の判断や、対応に伴う人件費の増加など、課題や悩みも多い。
正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすための「同一労働同一賃金」。すでに施行されている大企業に続き、2021年4月からは中小企業にも適用される。エン・ジャパンが実施した中小企業の人事担当者への調査によると、すでに対応が完了している企業は約3割にとどまった。“不合理な待遇差”の判断や、対応に伴う人件費の増加など、課題や悩みも多いようだ。
同一賃金同一労働の法制度については、報道などで多く取り上げられていたこともあり、認知度は高いようだ。「概要だけ知っている」が55%、「内容も含めて知っている」が44%だった。
一方、施行が4月に迫る中で、どの程度対応できているか尋ねると、「既に必要な対応が完了」と回答した企業は28%にとどまった。「現在取り組んでいる最中」が20%、「対応が決まり、これから取り組む予定」が3%、「対応を検討している最中」が16%、「対応が必要だが、何をすべきか分からない」が7%、「対応が必要か分からない」が6%。計52%が、対応が必要な可能性があるものの未着手または未完了だった。
すでに対応が完了していたり、対応が決まっていたりする企業に対応方法について聞くと、「基本給」が28%、「賞与」が27%と多数だった。「慶弔休暇」(17%)、「通勤手当(一律)」(13%)、「退職手当」(12%)という回答もあった。
同一労働同一賃金に対応する上で「難しい」と感じる点については、「待遇差がある場合、『不合理であるかどうかの判断』」と「同一労働同一賃金に対応した場合の『人件費の増加』」がそれぞれ23%で最多だった。また、「正社員と有期雇用社員の『待遇差の理由の確認』」(19%)、「有期雇用社員から求めがあった場合の『待遇に関する説明』」(13%)なども挙がった。
具体的な悩みや意見としては、「不合理である、というところの精査に手間取りそう」「労働が同一かどうかを評価することは、非常に難しい」「長期で働いてくれるかどうかわからない人と、長期で働く前提の正社員を同一として扱わなくても良いと思う」などといったコメントがあったという。
調査は、20年12月23日〜21年1月26日の期間、エン・ジャパンの人事向け情報サイト「人事のミカタ」を利用する、従業員数299人以下の企業の人事担当者を対象に実施。150社から回答を得た。
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