世界初! 人工合成タンパク質素材を開発した「Spiber」の今:15年間の研究を経て量産へ(6/6 ページ)
山形県に拠点を置く、次世代バイオ素材を開発している「Spiber(スパイバー)」をご存じだろうか。同社が開発したブリュード・プロテインは、石油に頼らない循環型の新素材であることから、“素材革命”として世界中から注目を浴びているのだ。同社の取締役兼代表執行役に、今後の展望などを聞いた。
量産に向けタイ・アメリカに生産拠点を準備中
約15年の歳月を研究開発に注いできたスパイバーだが、20年からは量産体制の動きが本格化。同社の一番のボトルネックだった生産キャパシティ不足の課題を解決すべく、タイのラヨーン県に生産拠点を建設中だ。年間最大数百トンを生産する規模で、21年中に稼働を開始する予定だという。
「タイ政府はバイオテクノロジーを利用した新産業の育成に注力しており、税制面の優遇など全面的な協力を得られています。生産のみならず、開発プロセスも担える大規模プラントとして位置付ける予定で、現地に法人を設立し、40人ほどの社員が在籍しています」(関山氏)
20年9月には、米国法人も設立。米国アイオワ州経済開発局からの経済開発促進助成金が降りることが決まり、 アイオワ州に生産拠点を設ける目的だ。米国での量産に向け、総額250億円の資金調達も実施。量産の動きが一気に加速している。
「米国の生産拠点は、タイのプラントの約10倍の規模です。現地の穀物プロセッサー大手、Archer Daniels Midland Company(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)と提携し、原料供給からオペレーションまでを同社に委託します。稼働は早くても2023年以降になる予定です」(関山氏)
研究開発中心の事業であったことから資金繰りは困難を極め、来月にはつぶれるかもしれない局面まで追い詰められたことも少なくない。しかし、あらゆる手を尽くして執念で乗り越えてきたという。
世界中から届く素材供給のオファーに応えられる日まで、すでにカウントダウンが始まっている。供給が追いつけば、収益が生まれ、原価が下がり、地球環境への負荷を大幅に減らすことができる。苦節15年、次世代タンパク質素材が当たり前の選択肢になる日は、すぐそこまで迫っている。
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