世界初! 人工合成タンパク質素材を開発した「Spiber」の今:15年間の研究を経て量産へ(5/6 ページ)
山形県に拠点を置く、次世代バイオ素材を開発している「Spiber(スパイバー)」をご存じだろうか。同社が開発したブリュード・プロテインは、石油に頼らない循環型の新素材であることから、“素材革命”として世界中から注目を浴びているのだ。同社の取締役兼代表執行役に、今後の展望などを聞いた。
給与は自己申告。画期的な制度を採用する理由
今年で創業14年目を迎えるスパイバーは、社員数約230人の企業に成長。関山氏をはじめ、多くの社員は本社を構える山形県鶴岡市で暮らしている。関山氏は田んぼに囲まれた古民家でニワトリを飼ったり、農作物を作ったりと半自給自足のような生活を送っているそうだ。家族で山形に移住する社員もいることから、同社では2つの保育園を開園し、企業主導型保育園として自社で運営している。
企業カルチャーを尋ねると、「人間としての幸せをもっとも重要だと考えている」と関山氏。
「自分と自分を取り巻く人たちが幸せにならなければ、そもそも生きている意味がないと私は考えています。ウェルビーイングやサステナビリティを追求すると、もっとも効率的なのは自分が所属するコミュニティに対して、価値のある貢献をして周囲を幸せにすることだと思うんです。当社でも、その価値観を非常に大事にしています」(関山氏)
目的は人間の幸せを追求することであり、タンパク質素材の開発は単なる手段にすぎない。だからこそ、できることは何でもやるし、実験的な取り組みにも果敢に挑戦できるという。
「社会的実験として、2015年から取り入れているのが自己申告制の給与システム。社員全員が自らの給与額を決め、自身が持つ視点や思いをつづったエッセイとともに社内で公開しています。これにより、一人ひとりが会社の事業状況、自身が生み出す価値、他者とのバランスなどを意識し、自主的に組織と関わるようになる。まだ実験段階ではありますが、確実に社員たちの視野は広がっていると感じます」(関山氏)
自己申告制で人件費のバランスが取れるのかといった疑問がわくが、実際のところ給与水準は高くないそうだ。現在は量産体制が整っておらず、十分な収益をあげられていないフェーズであることから、まず「事業を軌道に乗せること」を優先する社員が多いという。
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