「エヴァ」コラボは3日でほぼ完売 コスメブランドが「コナン」や「ワンピース」とコラボするワケ:綾波レイの姿とシンクロ(3/3 ページ)
カネボウ化粧品が展開するコスメブランドの「KATE」は2月、「エヴァンゲリオン」とのコラボ商品を発売した。最近はこうしたアニメやゲームと化粧品のコラボは珍しくなくなってきている。
世界的にIPコラボがトレンド、その訳は?
コラボは話題作りだけでなく、イメージやキャラクターを通じてブランド哲学を知ってもらう手法にもなっている。このような現象は世界的なもので、特に中国の化粧品業界ではIPコラボが盛んだ。
例えば中国コスメ「美康粉黛」は中国の伝統的な文化と現代的なトレンド要素をミックスした若者のブーム・国潮(グオチャオ)の流れを受け、中国のクラシカルなデザインが採用されたブランドだ。その美康粉黛がコラボ相手とした「魔道祖師」は古代中国を背景にしたファンタジーアニメだった。
中国ではジェネレーションZ世代(95年以降生まれ)を中心にアニメ、漫画、ゲームといった二次元コンテンツが大衆の娯楽となっており、珍しいものではない。eスポーツの選手は若者の憧れであり、ゲームユーザーの約半数は女性だ。
そういった背景から、グローバルコスメブランド「M・A・C」は昨年、中国の人気ゲーム「王者栄耀」(STRIKE OF KINGS)とのコラボシリーズを販売。同商品はゲームが世界的に人気であることから、日本でも発売した。
またM・A・Cは米国でも人気ゲーム「The Sims」とのコラボアイパレットを発売したが、評判は決して良いものではなかった。王者栄耀のコラボではキャラクターの世界観を重視したパッケージや色選びが行われたのに対し、The Simsは外箱のロゴ以外はゲームの世界観に通ずるものがなかったことが大きな要因だった。
名ばかりのコラボは作品ファンを失望させるだけでなく、本来達成すべき、真のブランドファンの獲得を逃すことにつながる。化粧品は容貌を美しく見せるという機能的な面だけでなく、エモーショナルな部分も併せ持つ。そのためブランドストーリーの共感者を増やすことは必須で、作品やキャラクターが持つ力は今後も注目されるだろう。
著者プロフィール
臼井杏奈(うすい あんな/ライター、編集者)
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社の記者職を経て、ビューティ業界紙WWD BEAUTYで記者・編集職。2020年4月からフリーランス。中国や欧米などの海外市場やビューティテック、スタートアップなどを中心に美容・ファッション関連の取材執筆を行う。
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