東北新社・NTT・総務省のエリートたちは、なぜハイリスクでも高額接待を実行したのか:「密室」問題から読み解く(3/5 ページ)
東北新社やNTTの官僚接待が波紋を呼んでいる。なぜ、エリート官僚はリスクの高い接待に応じたのか。解決のカギは「密室文化」にありそうだ
例えば、仲の良い友達同士の会話であったり、自治会やPTAなどの集まり、LINEグループ内でのやりとりなども密室の一種と言えます。
ただ、そうした身近に生まれている密室の多くは、自分たちだけオイシイ思いをするために意図的に作られるわけではありません。他の人を巻き込むことで不要な手間を取らせてしまうことを避けたり、互いの労をねぎらったり、ただ親睦を深めたりなど、あえて関係者を絞った結果として生じる“下心なき密室”だといえます。基本的なスタンスはオープンです。
それに対し、冒頭で触れた接待事件のような、自分たちだけオイシイ思いをするために意図的に作り出された密室には、他者を排除することで密室のメリットを享受したいという明確な下心があるのです。
密室は、脆くもある
ただ、先ほど挙げた3点のメリットには、互いに依存しあっているという構造上の危うさが潜んでいます。この依存関係は、どれか一つでも欠けると、連動して全てが崩れてしまうものです。
例えば、3点目のメリットとして挙げた秘密が守られることについて見てみます。何者かによって秘密が守られずに漏えいしてしまった場合、1点目のメリットであった信頼関係も失われてしまいます。また、情報がオープンになることで、2点目のメリットであった責任逃れも叶わなくなってしまいます。
総務省幹部の接待も、誰かが情報を外部に漏らしたからこそ大きな問題になったはずです。それは、そもそも1点目のメリットである信頼関係が損なわれていたことによって引き起こされたのかもしれませんが、いずれにせよ、3点のメリットが互いに依存しあう関係になっていることを示す事例の一つです。密室のメリットには、そんな脆さがあります。
密室を構築して、メリットを享受できれば強力な武器となるが、うまくいかなければ立場が危うくなり、一気に崩壊してしまう――こう書くと、まるでギャンブルのようですが、そんな「リスクを共有すること」自体が密室参加者同士の絆を深める要因になっている面もあり、なかなか問題は根深いものだといえるでしょう。
密室のメリットにはそんな危うさや脆さが内在していますが、意図的に作り出された密室が直接的に生み出しがちなデメリットもたくさんあります。こちらも主なものを3点ほど挙げてみます。
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