東北新社・NTT・総務省のエリートたちは、なぜハイリスクでも高額接待を実行したのか:「密室」問題から読み解く(2/5 ページ)
東北新社やNTTの官僚接待が波紋を呼んでいる。なぜ、エリート官僚はリスクの高い接待に応じたのか。解決のカギは「密室文化」にありそうだ
1点目は、強い信頼関係が生まれることです。他者を排除した状態で行われる「ここだけの話」には、この上ない特別感があります。他者には教えられないもうけ話などの「オイシイ話」や、重要人物のプライベート情報といった「オモシロイ話」、どこそこの企業が倒産しそうだといった「キケンな話」など、その場限りの話をオフレコで聞くことができます。
そんな秘密の話を密室で共有した人たちの間には、秘密を共有した者同士特有ともいえる、親しみの感情が芽生えることがあります。「ここだけの話」の中には、互いの弱みに関する情報も含まれているかもしれません。密室での会話を通じて秘密と弱みを共有する間柄になれば、その人たちの間には良くも悪くも、強い信頼関係が結ばれることになります。
2点目のメリットは、責任を伴わない非公式な約束ができることです。密室の中でなら「あなたを次期社長にするよ」などと口約束しても、公的な責任は生じません。実際の決議は、取締役会議などオープンな場で行われます。約束通りに実現するか否かはそこで決するまで分かりません。
それでも、影響力のある人物の発言であれば、それは実現可能性の高い口約束となるでしょう。約束してもらう側としては、口約束だったとしても高確率で実現すると思われるだけに大いに期待が膨らみます。一方で、約束する側としては結果として事情が変わることがあったとしても、約束に対する責任を問われることはありません。密室は双方にとって都合の良い駆け引きの場なのです。
3点目は、秘密が守られることです。他者を排した密室で行われる会話だけに、外部に漏れる心配はありません。密室に集った人たちは、安心して秘密事項を話すことができます。もし会話の中で失言があったり、法に触れるような話がなされたりしていても、密室であれば外に漏れることがないため、問題にはなりません。
密室は、身近にも存在する
密室は、政治家や官僚接待のような仰々しい場面でのみ生まれるわけではなく、日常生活の中の身近な場面でもたくさん生まれています。
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