結局バレる! 企業のトラブル対応は「2次被害」こそが重要なワケ:働き方の「今」を知る(1/4 ページ)
後を絶たない企業の不祥事・炎上だが、対応一つで影響を大きく変えることも可能だ。具体的に、どのように対応するのがよいのか、あるいは悪いのか。過去の有名企業での事例とともに解説する。
2021年2月下旬、スタートアップ企業におけるコンプライアンスやガバナンス体制の在り方と、危機管理広報の重要性について深く考えさせられる出来事が頻発した。
前回記事では、当該の事件において、どういった点が「炎上」を呼んでしまったのかを、本来取るべきであった行動とともに解説した。今回の記事では、過去に有名企業で起こった事例を扱い、不祥事が原因で企業のイメージが悪化したケースと、一方でうまく収束したケースを見ていく。
過去、大々的に報道され、歴史に残るレベルとされるような企業不祥事では、事件そのものよりも「企業のコンプライアンス認識」や「事件発生後の企業側の対応」が批判対象となり、1次被害よりも2次被害が大きくなっているケースが多く見受けられる。有事において、報道やいわゆる「炎上」を完全に抑え込むことは困難だが、一方で対応次第で批判の広がりを抑え、かえって企業側への応援に導くことができたケースも存在するのだ。その要諦(ようてい)こそ、まさに危機管理広報の姿勢と、企業内における日々のガバナンス体制にあるといえるだろう。
隠蔽が結局明るみに出た、ダスキンの事例
「ミスタードーナツ」を全国に展開するダスキンは、「無認可添加物隠蔽事件」により大きく非難を浴びた過去がある。
2000年当時、ミスタードーナツで販売されていた肉まんは、複数の食品メーカーに製造委託していた。ある日、同社の担当取締役のもとへ、そのうち1社で作られた肉まんに「国内無認可の添加物が使われている」との告発がなされた。しかし担当取締役は独断で口止め料を支払って隠蔽し、問題の肉まんの販売は継続されることとなった。結果的に、他の11人の取締役が事実を知ったときにはすでに肉まんの販売は終了し、大阪府の立入調査が入るまで事実公表はなされなかった。
会社側から事実公表しなかった理由は、「すでに販売終了しており、今後の流通予定もないこと」「健康被害の報告もないこと」「日本では未認可の添加物だが、欧米の基準では特に問題なく、健康上も害がないと判断されたこと」「関係者の社内処分もなされていること」だった。しかしその後、内部告発によって事実が公となり、マスコミも事件を報じたことで大問題となる。
結果的に、当時の社長・専務らが引責辞任。加盟店への営業補償、信頼回復キャンペーン関連費用などの出費は100億円を超える規模となった。裁判の結果、口止め料を支払って販売継続の判断を下した元取締役2人に対して約53億4000万円、隠蔽に関与していない取締役と監査役11人へも連帯責任として、約5億6000万円の損害賠償支払いを命じる判決が確定している。
法律的には正しくても炎上した、パロマの事例
ガスコンロや湯沸器を製造するパロマにおいて、1980年代から2000年代にかけて発生した一酸化炭素中毒死事件も同様のケースといえる。これは、同社のガス瞬間湯沸器を使用していた家庭で不正改造などによる事故が発生し、死者や重軽傷者が出てしまったものだ。
同社が製造出荷した段階では、製品自体に何ら欠陥はなかった。しかし顧客が使用する過程において、製品の延命を図るために、ガスサービス業者が安全装置を取り外して不正改造を行ったことが原因で、不幸な死亡事故に至ったと推定されている。パロマは不正改造がまん延していることは把握しており、社員と系列店に注意喚起文書を複数回にわたって配布していた。結果として不正改造自体は止まったものの、出荷済湯沸器の全数点検も、利用者への注意喚起も行わなかったため、事故が発生し続けたのである。
サービス業者による不正改造は、製造段階での「瑕疵」や「欠陥」ではないので、民法や製造物責任法における「事故による損害賠償責任」を負う根拠はパロマ側にない。また当時は、自社製品に関する重大事故情報の公表を義務付ける法律は存在しなかったため、法律論としてもパロマ側に非はなかった。実際、事件発覚当時の記者会見でも、パロマ側は「製品には全く問題ない」とし、自社も不正改造の被害者であるとのスタンスをとっていた。
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