安易なオフィス縮小にリスクあり! では、これからのオフィス環境はどうすべきか?:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
二度の緊急事態宣言を経ても収まらないコロナ禍。ニューノーマルだったテレワークが常態化し、オフィス縮小を取り沙汰する企業も出てきている。しかし、著者は安易なオフィス縮小にはリスクがあると指摘する。では、これからのオフィスはどうするべきなのか。
リモートワークなどにより、社員が分散することにより、会社とのつながり感の希薄化や、交わりの場が減少し、これが組織の求心力や一体感の低下につながるという調査結果が、いくつか出てきている。そんな中で、同一の場にいることで、「つながり」や「自社らしさ」を体感し、その中で偶発的な「交わり」によりイノベーションが生まれる、そして新しいアイデアが沸き起こるような場所としてオフィスを作っていく必要があるといえる。
「つながり」は、以前に記したように、味覚・嗅覚・触覚などにより生まれることも多い。例えば、コロナ禍以前では、社食のような同一の場で、同じ匂いや味を感じることでつながり感を醸成していた。現在は感染拡大防止という観点から社食を閉鎖しているところも多いが、感染の危機が縮小したのちは、社員食堂やリフレッシュルームといった、飲食ができ、対話やコミュニケーションが生まれる場所をしつらえる必要がある。
「自社らしさ」とは、例えばコーポレートカラーやロゴマークであり、自社製品や歴史、このようなものを見たり、読んだり、触れたりることで体感していくものだ。さらに、自社のカルチャーを身に付けた社員同士のコミュニケーションでも、らしさは体感できる。言葉の端々にその会社ならではのカルチャーが出るものだし、常にそれを意識して会話や行動をすることで、らしさが浸透していく。総務として、そうしたカルチャーを発信するイベントなどを主催するのも、今後はやるべきだろう。
3つ目の「交わり」は、囲われた居室ではなく、オープンで自由な、誰でもふらりと立ち寄れる場において、そしてリラックスした状態で行われるべきものだ。これは社内だけに限らず、社外に対してもオープンな点が重要になる。最近では、自社のメンバーだけでなく、訪問してきた外部の人も作業できるワークスペースを設置する企業も増えてきた。こうした場で、ふとした出会いにより会話が始まり、課題感や問題点を気軽に言葉にすれば、思いもよらない角度から発想が生まれることもあるだろう。イメージとしては、飲み物を片手にざっくばらんに会話ができる場、そんな交わりの場をしつらえたい。
デジタル空間も「場」として捉える
リモートワークにより、テキストによるコミュニケーション、あるいは映像によるコミュニケーションが確実に市民権を得た。誰でもがWeb会議ツールを使いこなし、離れていても自由にコミュニケーションがとれる状態となっている。当初はリアルでの会議と比較して、さまざまな点から心配の声もあったかと思うが、慣れてくると、チャットや画面共有、録画機能などを使いこなし、リアル会議より効率的に会議がされるようになった企業も多いはずだ。
このリモート会議は、「いかにリアルでの体験に近づけるか」といった観点で考える総務担当者も多いが、そうではなく、「いかにリアルでの体験を超えるか」と捉えた方がよい。せっかくITを使っているのに、ITを使っていなかった環境に合わせるのは、本末転倒だからだ。
そうなると、今後同一のオフィス内にいたとしても、あえてリモート会議を行う、という選択肢をとることもでてくるだろう。画面共有もしやすいし、発話者を遮らずに、気兼ねなくチャットでいろいろと意見を述べることもしやすいはずだ。
つまり、先ほどはリモートワークとオフィスも含めた「広義のABW」という表現をしたが、さらにデジタル空間も一つの「場」として加えた、超広義のABWが、今後は大きなトレンドとなっていくだろう。働き方をデザインする必要がある。
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