育休判明でローン融資拒否! 高飛車な銀行は、これから滅ぶと思えるワケ:働き方の「今」を知る(5/5 ページ)
男性が育休であることが判明し、ローンを断られた事例が話題に。いまだに金融機関の審査では、硬直的な審査が続いている。しかし、今後はこうした高飛車な銀行は、滅んでいくのではないだろうか。
実際、16年から続くマイナス金利政策により、銀行の収益は大幅に減少しており、人員削減や支店閉鎖などのリストラを継続中。メガバンク各行の21年卒の新卒採用人数をみても、いずれも前年度から約10〜15%減という状況だ。また、金融庁が独自に発表した業績分析によると、「15年3月期決算の時点で4割の地銀が赤字」「25年3月期には6割超へと赤字数が膨らむ」となっている。
しばしば「日本はオーバーバンキング(銀行過剰)状態」だといわれる。人口に対する銀行数こそ、諸外国と比べて決して多いわけではないが、他行と何ら差別化できず、さほど利益が生まれない融資業務から抜け出せない旧態依然とした経営を続けている所ばかりなのであれば、過剰といわれても仕方ないだろう。
昨今、インターネットを活用した融資や現金不要のキャッシュレス決済、スマートフォンでの送金、仮想通貨とそれを支えるブロックチェーンなど、金融サービスと情報技術を組み合わせた「フィンテック」と呼ばれる新たな動きが広がりを見せている。フィンテック分野においては、ヤフーやソフトバンク、楽天など金融業界外からの新規参入も多く、銀行業界としてはいかに早くデジタル化、ユーザーへの利便性、生産性の向上を成し遂げるかが鍵となるはずだ。
しかし、銀行業界の閉鎖的な体質は、こうした新たなサービスや異業種参入の妨げになりかねない。例えば、公正取引委員会は20年4月、銀行間の送金手数料について強く是正を求めるとする報告書を発表している。当該報告書によると、銀行間をまたぐ送金の際にかかる手数料は本来、交渉で決められるものだが、実際のところ変更交渉が行われないまま40年以上も変わっていない。諸外国では同様の取引において手数料をとっておらず、事務コストを上回る額を徴収しており、利用者の振込手数料にも影響を及ぼしている、との内容が記されている。
手数料への是正要求はまさに象徴的なケースだが、キャッシュレス決済の場合、サービス事業者や利用者が最終的に手数料を支払うケースが多い。銀行間手数料が下がるだけでも、事業者間の競争が促進され、新たなサービス開発や、利用者の利便性向上につながることが期待できよう。
黙っていてももうかる時代は過ぎ去った
黙って店舗を構えていれば、お金を借りたい人が頭を下げて集まってきた時代は終わった。これからは社会の根幹をなす存在として、顧客との寄り添い方を変える必要があるし、銀行としても新たな働き方やスタイルを創出していく必要がある。
人件費削減や支店閉鎖、もしくは銀行の統合や再編はあくまで手段の一つにすぎない。例えば、これまで膨大に蓄積された預金口座の決済データを基としてビッグデータを分析することで、従前はリーチできなかった顧客層にサービス提供できる可能性があるかもしれないし、自行のデジタル対応化で得た知見やノウハウを、取引先中小企業へのIT化支援という形で生かせるかもしれない。個人向けビジネスにおいても、それこそ今般の育休や住宅購入のように、顧客個人のライフイベントに合わせた形でタイムリーな提案ができるようになるかもしれないのだ。
金融インフラは重要な公共財であり、今後成長が見込まれるフィンテックの各種サービスの基盤となるものだ。筆者自身もメガバンクおよび地元信用金庫のユーザーとして、各行には地域特性を踏まえ、独自の顧客本位のビジネスモデルを構築し、地域顧客の役に立つ存在へと変革してくれることを願ってやまない。
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