ファミマのコスメは半年で30万本超の売り上げ セブンやローソンはどう対抗? コンビニが化粧品売り場に力を入れる理由:緊急需要じゃない(3/3 ページ)
コンビニの化粧品売り場に異変が……緊急需要を満たす商品から新しいニーズに対応する商品へと変化している。なぜ化粧品売り場に力を入れるのか
新しい生活様式で伸びたケア製品
コロナ禍の新しい生活様式による変化も見られた。20年4月の緊急事態宣言では多くの化粧品販売店が休業や時短営業を行い、消費者も外出を自粛。宣言明け以降もテレワークなどで自宅近辺にとどまる人が増え、オンラインや身近なスーパー、ドラッグストアで化粧品を買い求める人も増加した。特に消耗品であり必需品でもあるケア製品はその動きが顕著だ。
セブンは20年12月に「オーシャントリコ アンサーシリーズ」を発売した。若年層男性を中心に支持を集める有名サロン「オーシャン トウキョウ(OCEAN TOKYO)」がプロデュースするヘアケアシリーズ「オーシャントリコ」との共同開発商品で、シャンプー、トリートメント共に1650円と、従来のコンビニ販売品と比べて高価格なのが特徴だ。同商品はセブン&アイグループ傘下のイトーヨーカドーでも販売される。
セブン&アイホールディングスはこの商品の開発背景として、新型コロナウイルスの感染拡大後、サロン品質のシャンプーなどを自宅近くで購入する人が増えたことを挙げる。同グループのスーパーでも高価格帯シャンプーの品ぞろえを増やし、カテゴリーの売り上げは前年の約2.4倍に伸長したと発表した。
ファミマでも在宅需要によりフェースパックの売り上げが伸びたため、20年の秋冬は例年より多い2倍のアイテム数を取り扱ったという。
20年9月にローソンで先行発売したファンケルのスキンケアシリーズ「mogu(モグ)」は日常使用を目的としたサイズで、全5アイテムを各990円で販売する。ターゲットは20〜30代の多忙な女性。仕事や家事育児などで多忙な女性にとって、買い求めやすいアイテムを買い求めやすい場所で手に入れられるというのも今の生活様式にあった選択だ。
全国にコンビニ店舗は約5万5000店あるといわれる。その店舗数の多さと営業時間、気軽に手に取れる環境は他の化粧品購買先と比較して抜群の利便性といえる。今後は化粧品の購買先として、よりメジャーな存在となっていきそうだ。
著者プロフィール
臼井杏奈(うすい あんな/ライター、編集者)
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社の記者職を経て、ビューティー業界紙WWD BEAUTYで記者・編集職。2020年4月からフリーランス。中国や欧米などの海外市場やビューティーテック、スタートアップなどを中心に美容・ファッション関連の取材執筆を行う。
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