西武園ゆうえんちの準備は整った しかし、足りない要素が2つある:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)
西武園ゆうえんちが5月19日、「新しくて古い都市型エンターテイメント」として生まれ変わる。1960年代の商店街を中心に据え、海外から認知度の高い日本発キャラクターを登場させることで、従来の「鉄道沿線遊園地」から「日本型テーマパーク」へ進化を遂げる。しかし、沿線外に訴求するには「あと2つの要素」が必要だ。
しかしそれから人気は衰え、20年後には60万人を下回る。その後は経営努力で持ち直そうとしたけれど、70万人を超えられない。17年度はついに50万人を下回り、翌年度も横ばいとなった。これが「鉄道沿線遊園地」の限界だったといえる。
19年に飯能で「ムーミンバレーパーク」が開業した。西武鉄道の運営ではなく、むしろ西武鉄道は保有地を譲渡している。西武鉄道にとっては悪くない話で、国内外からの鉄道誘客と「沿線価値の向上に寄与する」存在だ。コラボレーション企画も多々展開している。しかし、西武園ゆうえんちから見れば、西武鉄道沿線のレジャー施設として競合する。
このままでは西武園ゆうえんちは危ない。そこで西武鉄道と西武園ゆうえんちは、パートナーとしてマーケティング企業「刀」を選んだ。刀の代表取締役CEO・森岡毅氏の手腕を買った。西武園ゆうえんちを鉄道沿線依存から脱却させるためだ。
森岡氏はP&Gのマーケティング部門を歴任し、10年にUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)にヘッドハントされた。その後「ファミリー集客の強化」「関西依存からの脱却」を掲げ、料金を値上げしつつ集客を増やすという偉業を達成した。
USJの集客数は初年度(01年度)に1100万人以上から800万人台まで減少した。11年以降は上向きとなり、16年度は1460万人に達した。このノウハウこそ、西武園ゆうえんちが求める技術だった。
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