西武園ゆうえんちの準備は整った しかし、足りない要素が2つある:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/7 ページ)
西武園ゆうえんちが5月19日、「新しくて古い都市型エンターテイメント」として生まれ変わる。1960年代の商店街を中心に据え、海外から認知度の高い日本発キャラクターを登場させることで、従来の「鉄道沿線遊園地」から「日本型テーマパーク」へ進化を遂げる。しかし、沿線外に訴求するには「あと2つの要素」が必要だ。
「レッツゴー!レオランド」は森岡氏がUSJで取り組んだ「ファミリー集客の強化」にあたる。もともと西武園ゆうえんちは沿線のファミリー層のためにあった。この顧客を他地域のテーマパークから取り戻さなくてはいけない。西武鉄道はアニメと沿線活性化の取り組みを続けていたし、手塚治虫作品のジャングル大帝レオは埼玉西武ライオンズのキャラクターでもある。両者の良好な関係を象徴するコラボだと言える。
レオランドでは、ジェットコースター「アトムの月面旅行」、回転型ライド・アトラクション「飛べ!ジャングルの勇者レオ」など4つのライドを含む6つの体験が用意されている。
鉄腕アトムは03年のテレビ放送第3作『ASTRO BOY』が世界各地で放送された。ジャングル大帝レオは67年にヴェネツィア国際映画祭でサンマルコ銀獅子賞を受けた。後のディズニー作品『ライオン・キング』に影響を与えたことで海外にも知名度がある。
手塚アニメで育った世代としては、今後は他の作品『リボンの騎士』『ブラックジャック(とピノコ)』『三つ目が通る』などの登場にも期待する。『アドルフに告ぐ』のパン屋「ブレーメン」がさりげなく開業してくれたら嬉しい。
『ゴジラ・ザ・ライド大怪獣頂上決戦』は、建物としては「夕陽の丘商店街」に通じる映画館だ。しかし中身は最新技術を投入したアトラクションになる。「ゲストは映画を見に来たつもりが、館内の緊急放送で東京に謎の巨大生物キングギドラが現れ、建物をなぎ倒しながら埼玉方面へ向かっていると知らされる。ゲストは特殊災害対策部隊の特殊装甲車に乗りこみ、ゴジラやキングギドラたちの激闘の真っ只中に放り込まれる」という10分間のストーリーだ。
ゴジラはアメリカでも大人気の怪獣で、98年の映画『GODZILLA』は低評価ながらもまずまずの興行成功となった。14年にワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズによる『GODZILLA ゴジラ』は高評価で成功し、19年の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』につながった。ゴジラシリーズ3作目『ゴジラvsコング』の日本公開予定日は5月14日で、新生西武園ゆうえんちオープン直前だ。グッドタイミングである。
『ゴジラ・ザ・ライド大怪獣頂上決戦』の監督はVFX(CG視覚効果)の第一人者、山崎貴氏。『ジュブナイル』『リターナー』などのSF作品だけではなく、『ALWAYS 三丁目の夕日』では昭和レトロ世界の再現にVFXを組み合わせてリアルな情景を作り上げた。『STAND BY ME ドラえもん』も手がけており、西武鉄道ではドラえもんつながりでもある。
日本では東宝特撮版ゴジラが連作され、近年では庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』が興収80億円超の大成功を収めている。山崎監督の描くゴジラがどんな映像になるか、世界のゴジラファンが期待しているはずだ。COVID-19が沈静化すれば、世界からゴジラファン、手塚ファンがやってくる。
関連記事
- 鉄道模型は「走らせる」に商機 好調なプラモデル市場、新たに生まれた“レジャー需要”
巣ごもりでプラモデルがブームに。鉄道模型の分野では、走らせる場を提供する「レンタルレイアウト」という業態が増えている。ビジネスとしては、空きビルが出やすい今、さらなる普及の可能性がある。「モノの消費」から「サービスの消費」へのシフトに注目だ。 - 「としまえん閉園」は寂しいけれど…… 鉄道会社にとって“遊園地”とは何か
東京都練馬区の遊園地「としまえん」が閉園し、跡地は大規模公園、一部にテーマパークができると報じられた。お別れは寂しいが、鉄道会社系遊園地の役割は大きく変わり、これまでにもたくさんの施設が閉園した。その跡地には、時代に合った街ができている。 - 「第2青函トンネル」実現の可能性は? “2階建て”構想の深度化に期待
2020年11月、「第2青函トンネル」構想の新案が発表された。2階建てで、上階に自動運転車専用道、下階に貨物鉄道用の単線を配置する案だ。鉄道部分は輸送力が足りるか。急勾配も気になる。だが、新トンネルは必要だ。設計の深度化を進めて実現に近づいてほしい。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - 「EV化で30万人が仕事を失う」説は本当か
EVの普及によって雇用が30万人失われる――。2月、このような記事が話題になったが、この数字は本当なのか。ガソリン車と比べEVは部品点数が少ないので、部品メーカーが淘汰されるのはほぼ間違いないが、その一方で……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.