総務がもっと経営陣から評価されるためには? 「総務白書」作成のススメ:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
縁の下の力持ちとして語られがちな総務部署だが、デジタルツールの活用であらゆるものの「可視化」がしやすくなったことで状況が変わってきている。これからの総務はデータアナリストとして活躍すべきだと筆者は指摘する。
総務白書とは、総務で管轄している全てのデータを集約したレポートを指す。
総務が関係する予算は「総務財布」とも呼ばれるが、これは人件費に次ぐ大きな規模のものである。総務財布に含まれるのは、総務部管轄のPLに反映される総務直接予算だけではない。総務は契約締結を担当することも多く、各部門のPLに反映される営業車両のリース料、営業所の賃借料や、総務に購入先のアドバイスを仰ぎ、結果現場部門が購入するようなコストなども総務財布に含まれてくる。
このようなコストとして現れるデータ、そして総務への問い合わせの数、建物の耐用年数、備品の数やコピー機の稼働実績、保有営業車の数から走行距離、事故の件数――そうしたデータを集約して、今の会社の状況が把握できる総務白書を作成してみるのはどうだろう。
日々、経営サイドで把握できるのはあくまで営業的な数字であり、その数字を作り上げている現場の状況については、口頭や体感値で報告されるくらいのケースがほとんどだ。そのため、定性的な情報しか上がってこない。そこを総務として、定量的に全社の動きが把握できる総務白書で状況を説明するのだ。
現場の状況に即した打ち手を展開でき、そしてPDCAサイクルを回していければ、重要な経営情報として評価されるはずだ。一方で、総務としても、現場に即した施策を立案するためには、現場の状況を知らなければならない。総務自身のためにも総務白書を作成することは大変重要なのである。
総務白書の作成、その前のデータの収集と分析。総務の今後の役割として考えられるのが、こうしたデータアナリストとしての役割である。DXが進展すればするほど、それが実現できる素地が出来上がってくるのだ。
ただ、そもそもの話として「テクノロジーの導入」が必要であることは意識しておこう。総務がテクノロジーを嫌っていては仕事にならない時代となっている。テクノロジーの使い手としての総務、そしてその結果生まれるさまざまな情報の使い手であるデータアナリストとしての総務。ニューノーマルにおいてはぜひ目指したい姿である。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)、『経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター)
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