2015年7月27日以前の記事
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トヨタ豊田章男氏の主張は、我が身可愛さの行動なのか?高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)

電動化=脱エンジンなのか? それとも、日本の産業構造を一気に変えるようなことができるのだろうか。たしかに今ここで日本の産業構造を変えなければ、かつての半導体の二の舞いになる。そこで自動車産業を日本の基幹産業として存続させるためには何が必要なのか、ここで考えてみたい。

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国内における水素の利用はどうあるべきか

 このところ再び水素利用に対する議論も熱くなってきた。燃料電池による電動車としての利用だけでなく、ガスタービンの燃料利用、そしてクルマの内燃機の水素燃料化など、エネルギーとしての水素利用が、いよいよ本格化しそうな気配さえ感じられる。

 水素は地球に無尽蔵にあるエネルギーなどという触れ込みは眉唾モノ(水素は燃料にはなるが、作り出すにはそれ以上のエネルギーが必要だ)だが、電力を作り有効活用しようという考えの中に、水素を蓄電デバイスとして利用するのは理に適っている。水素燃料電池がそもそも水素を蓄電に利用しているものだからだ。しかも作られた水素は発電用エンジンで燃やしても、走行用エンジンで燃やしても、エネルギーとして利用できる価値は変わらない。

 川崎重工が液体水素運搬船の造船を進め、オーストラリアで褐炭(低質な石炭)から取り出される水素を輸入しようという動きもある。だが海外で作られた水素を輸入するのは、炭素クレジットを購入するのと意味合いは同じだ。水素はクリーンなエネルギーという触れ込みを利用するなら、海外から購入したり、天然ガスから取り出したりする(この時にCO2が発生する)だけでは意味がなく、あくまで国内でグリーン電力によって水素を生産するようにすべきだろう。

 再生可能エネルギーについては、今は地熱発電を進められる機会ともいえる。日本はプレートの境界が集まることで地震が発生しやすい地域となっているが、その一方で海洋資源や地熱資源は非常に豊富だからだ。

 コロナ禍で観光客が激減した温泉地帯に、その既得権益の一部を譲渡してもらう、あるいは長期にわたって貸与される形で、これまで頓挫した地熱発電設備の建設を進めるのだ。温泉街には長期間安定した収入が得られることになり、しかも実際には温泉が枯渇するわけではないのだから、再び観光客が戻れば温泉街は活気づいて、国内景気を底上げすることにつながるだろう。

 温泉によっては源泉の温度が高過ぎて、湯畑で冷ましている。これも温泉街の名物ではあるが、現代で考えればエネルギーの無駄遣いともいえる。その前の源泉で温泉発電に利用することもできるが、地熱発電により温泉の圧力や温度が下がれば熱を捨てる必要がなくなり、一挙両得になることも考えられる。

 地熱発電や潮流発電によって水素を作り、それを他の動力機関で利用するのが、日本の水素利用のあるべき姿ではないだろうか。


宮城県の鬼首温泉にある鬼首地熱発電所。設立は1975年と半世紀近くも安定した電力供給を行ってきた地熱発電設備だ。日本では地熱資源が世界3位といわれながら、地熱発電の開発はなかなか進んでいない状況がある

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