今、あらためて考える「福利厚生」 総務が押さえるべき3つのポイントとは?:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
コロナ禍により、従来型の福利厚生の見直しが始まっている。総務としてはどう対応すべきなのだろうか。『月刊総務』編集長の豊田氏は、3つのポイントを押さえるべきだと主張する。
調査では、現状の福利厚生の課題についても尋ねた。すると、「全従業員への平等性」「制度の利用率」「経営層の福利厚生に対する理解」などの意見が寄せられた。この3点について、ここからは考えてみたい。
平等な福利厚生、カフェテリアプランがトレンド
まずは、「全従業員への平等性」。これは福利厚生を考える上での原則となるポイントだ。例えば、特定の人が使える制度であると、それ以外の従業員からの不平不満が噴出する。よく問題となるのが、喫煙者への禁煙サポートである。タバコを吸う人だけ優遇されてずるい、という意見が出やすい。これが典型的な例である。
平等性は、多様性の広がる現代社会において、確保がなかなか難しいものだ。さらに、今回のコロナ禍における、福利厚生による在宅勤務環境のサポートでは、各家庭環境のバラつきが課題ともなる。どのレベルに合わせるのか、何を基準として総務として判断するのか、これが大きな課題となるだろう。
この平等性という観点から、特に伸長著しいのが、「カフェテリアプラン」だ。これは、各従業員にポイントを付与して、そのポイント内で自分が利用したい福利厚生制度をメニューの中から選ぶ制度を指す。多様性が進むにつれて、価値観や環境の違う従業員が増加してきたことに端を発し、各自へ平等にポイントを付与し、それぞれが自由に使えるこのカフェテリアプランを導入する企業が増えてきたのだ。
今回の在宅勤務に伴うテレワーク手当も、考え方は一緒だ。つまり、同一の金額を支給し、何に使うかは各自任せなのである。あるいは、仕事のための椅子を購入するにも、ある程度の種類を提示して、その中から各従業員に選んでもらう、ということにしている企業が多い。何か特定の椅子のみを提供する、という仕方ではない点がポイントだ。
つまり、企業側から、「この人にはこの福利厚生」というように一対一の対応ではなく、幅広いメニューを提示して、選択は各従業員に任せるという方法が、福利厚生の大きなトレンドとなっている。多様性について、今後ますます増していくことは必然であり、それに対応するには、幅広いメニューの提示と利用者側に選択してもらう、このセットで対応していくことになるだろう。
重視すべきは「カバー率」
では、この考え方に基づく場合の「利用率」をどう捉えるべきなのか。筆者は、利用率よりカバー率を重視する必要があると考える。最も避けたいのは、使える制度が存在しない、という事態である。
多様な人が存在するということは、幅広く使われることを想定しているはずなので、利用率が低い制度も当然出てくる。しかし、利用率が低いからといってそうした制度をなくす、という考え方では多様性が担保されない。どれだけ、使えるメニューを用意できるか、というカバー率を重視して設計することが今後は重要になると思われる。今使われなくとも、次に入社してくる人が対象となる、そうした可能性もなくはない。どのような人であっても利用できる、そのように考えて準備していくことが求められるのだ。
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