YouTubeで大ブレイク中のひろゆき、コロナ禍で人気の秘訣はどこに?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
コロナ禍を機に露出が増えた有名人といえば、元「2ちゃんねる」管理人の西村博之氏(通称:ひろゆき)だ。同氏におけるYouTubeチャンネルの動向を確認すると、ひろゆき氏はコロナ禍をうまく味方につけて自身の登録者数・再生数を伸ばしていることが分かる。
リアル同僚・友人の代わりになっているひろゆき
ひろゆき氏のチャンネルで人気となっているコンテンツといえば、視聴者とのお悩み相談アーカイブだ。
時には、相談者のコメントに対して「無能」といった手厳しいワードを織り交ぜながら、視聴者の悩みに対してストレートに解決する策を提示する“ひろゆき節”も炸裂する。しかし、彼は「無能」という言葉自体には、侮蔑(ぶべつ)の意味がないことを前置きでしっかりと伝えていることもあって、視聴者もそれを理解した上で配信を楽しんでいる様子だ。
このような「お悩み相談」というコンテンツそれ自体は昔から存在したものであり、YouTuberの中でも、専門のコンテンツとして取り扱う大御所も少なからず存在する。現にひろゆき氏自身も、質問に回答するコンテンツ自体は18年の時点からアーカイブが残っているが、冒頭に挙げたグラフから考えると、コロナ前の段階ではその注目度はほとんどなかったといって差し支えない。
そんなお悩み相談コンテンツが、なぜ今注目を浴びているのだろうか。それは、コロナ禍によってリアルな人とのつながりが減少したことにあると考えられる。
ひろゆき氏の配信を確認する限り、お悩みを投稿している視聴者は、やはり「2ちゃんねる」やひろゆき氏も管理人を務めた「ニコニコ動画」にゆかりが深い20代以降の大学生から社会人が多い。そして、ひろゆき氏のチャンネルの伸びが緊急事態宣言の時期と概ね意一致していることも踏まえると、外出自粛やリモートワークといった新たな生活様式を取り入れざるを得ない都市部の人が、その多くを占めると考えられる。
特に、昨年から今年にかけて入学したり、就職したり、転職したような人の中には、リモート授業やリモートワークによって自宅からオンラインコミュニケーションを取らざるを得なかった人も多い。職場の同僚や上司、学校の教授や友人といった身近な人と馴染(なじ)むことが難しい状態にあった人も少なくない。
そんな中でニコニコ動画や2ちゃんねるといった、ほとんどの人が少なくとも聞いたことことのあるサービスを作り上げ、ある程度の社会的信頼のあるひろゆき氏に、視聴者は人生の悩み相談や指南を受けたいと考え始めたのではないだろうか。
そして、有名人のお悩み相談の中でもひろゆき氏が卓越している点が、「引き出しの多さ」と「意外性のある回答」である。ひろゆき氏のアーカイブでは、ビジネス、投資、政治、就職、人間トラブルなど、多岐にわたる質問が寄せられるが、その全てにほぼノータイムで、他のお悩み相談系YouTuberが言わないような回答をする。
普通のお悩み相談は、例えば冒頭の「無能」をテーマにすると、いかに「有能になれるか」というアプローチで答えるのが普通だ。一方ひろゆき氏の場合は、無能であることを受け入れた上で、どう無能なりに生きるかというアプローチで回答する。これは、無能は悪いわけではないという、一種の肯定ともいえ、視聴者の「有能にならなければならない」という息苦しさから解放してあげる“受け入れタイプ”の回答だ。ひろゆき氏のお悩み相談は、言葉こそ毒舌・辛辣に見えるが、実は優しいお悩み相談コンテンツなのだ。
中には、自分が優秀と考えている相談者をあなたは無能ですとバッサリ斬るようなこともあるが、苦しんでいる人には心温まる回答をすることが多く、「弱きを助け強きをくじく」形になっている。
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