“日本一の朝食”を出す函館のホテル 宿泊客数を抑えてまで守ったモノとは?:連載・瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/4 ページ)
日本一の朝食と言われるセンチュリーマリーナ函館は、宿泊予約流入をコントロールし“稼働を落とす”ことを指示。宿泊客を減らしてまで実現したかったこととは?
あえて「客室稼働率」を80%まで抑えて実現したかったこと
同ホテルは“体に優しい食をコンセプトに北海道の食材を生かした150品目以上の朝食ブッフェ”をウリとする。実は、評判となった後「夕食もおいしい食事を楽しみたい」というゲストの声があった。せっかくの考え抜かれたブッフェ会場もあることから、チャレンジしたが結局諦めたという逸話がある。
夕食といえば「朝食を上回るクオリティーは当然」というのが一般の考えだろうが「朝食が凄すぎてそれを上回る夕食を出すことができなかった」のだとか。
開業に際して長期にわたり研究した朝食内容は、まずグループホテルで検証を進めた。メニューが完成したことではじめて“図面に落とし込まれる”。そこから席数が決まり、レストランのサイズも決まる。
センチュリーマリーナ函館宿泊支配人の反保宏士郎氏によると「当初想定していた朝食をとるゲスト数は1日450人、平均で1時間150人。喫食率(この場合、宿泊者のうち朝食をとるゲストの割合)は80%で計算していたが、いざ開業すると90%に跳ね上がっていた」と話す。
実際には満室稼働の日も多く、そうすると550人になる。現場はウェイティング対策に躍起になったが、中野氏は原点に立ち戻った。
なんと、朝食の混雑緩和のために宿泊予約流入をコントロールし“稼働を落とす”ことを指示したのだ。客室稼働率は当初88%を想定していたが、事業計画を見直し80%までに抑えることにした。「目一杯売るのはやめよう」と予約担当者に話したという。
その反面、宿泊単価を下げないことは死守した。そうして稼働を落としたことにより、ADR(平均客室単価)を結果として約2000円上げることになる。
コロナ禍で稼働率が20%まで落ち込もうが、単価は落さなかった。朝食でいえば、単価を落とすとゲスト層が変わり、レストランで出す料理も客層に合わせなければならなくなる。すなわち単価を落としてもターゲット客層の顧客満足度は上がらないというわけだ。
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