【解説】バーティカルSaaS 国内でも盛り上がりの兆し(2/5 ページ)
最近、注目を集めている“バーティカルSaaS"という言葉を聞いたことがあるだろうか。業界を問わず利用されるクラウド型のシステムは、部署や部門の課題を水平的にカバーすることから“ホリゾンタルSaaS"と呼ばれている。一方「建設」や「不動産」など、特定の業界に根付いた課題を解決するシステムは、垂直を意味する“バーティカルSaaS"と呼ばれ、徐々に認知が広まってきている。
国内バーティカルSaaS企業の規模感は
バーティカルSaaSは特定の業界に向けたBtoB向けのクラウドシステムである。一般のビジネスパーソンには馴染みが薄いが、ベンチャーキャピタルなど新興企業への投資家やSaaS業界内では定着しつつあるワードだ。
米国では2000年台から取り組みを始めている企業も多く、近年大型のIPOや資金調達が相次いだ。日本のSaaSは米国と比べ「5年遅れで発展している」と言われているが、16年ごろから続いたホリゾンタルSaaSのIPOラッシュに続き、バーティカルSaaSにおいても盛り上がりの機運が高まっている。
バーティカルSaaSのグローバル水準を確認していくと、米国を中心に上場企業数で19社、時価総額合算ベースで40兆円、未上場では企業価値が1000億円以上のユニコーン企業は60社、企業価値算出合算ベースで19兆円と巨大な投資規模となっている。
一方、国内SaaS企業の規模感を集計した数値は以下の通りだ。
国内バーティカルSaaSの規模は、非SaaS事業を含むメドレーやエス・エム・エスを含めても時価総額合算で1兆円に満たない規模だ。国内ホリゾンタルSaaSと比較しても3分の1程度にとどまっている。
個別の企業に目を向けると、エス・エム・エスが提供する介護事業所向けシステム「カイポケ」や、インフォマートが提供する食材卸と飲食店の受発注システム「BtoBプラットフォーム 受発注」などがバーティカルSaaSにおける草分けとなっており、ARRベースでは60億円を超える規模となっている。
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