「打倒ヤマダ」のヒントは復調中のブックオフにあり? リユース(中古品売買)業界が生き残るヒント:小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)
ヤマダデンキがアウトレット部門へ注力し始める。迎え撃つリユース業界は、コロナ禍でも比較的好調で推移している。中でも、生き残るヒントはブックオフにあるかもしれない。
いわゆる、リユース(中古品売買)業界、リサイクルショップというビジネスにおいて、最も重要なのは「中古品を買い取る力」だといわれている。
一般的に、新品の仕入れにおいては、メーカーとの交渉の中で相応の価格を提示すれば商品を調達することは可能だ。一方、中古品の場合はそうもいかない。売れ筋製品があったとして、それを売ってくれる人がいなければ、仕入れることはできないからだ。売りたい人と、買いたい人の場所的なアンマッチもあり、リサイクルショップは買い取り/仕入れを持続的に行える仕組みづくりこそが重要だともいわれる。
この点でも、ヤマダのような新品販売の国内大手が、買い替え需要に対して中古品を積極的に引き取るとすれば、他の追随を許さない存在になりうる可能性がある。同社は家具、リフォームといった分野もこれから強化していくようなので、家電に限らず、幅広いジャンルに関するリサイクルループが構築されるかもしれない。
ヤマダの参入で、古参各社はどうなる?
さて、ヤマダが中古品売買へ本格的に参入しそうだという話から転じて、他の中古品売買、リサイクルショップ各社は、コロナ禍の今どんな状況にあるのだろうか。
この業界の上場大手企業といえば、ゲオ、ブックオフグループ(ブックオフ)、ハードオフコーポレーション(ハードオフ)、トレジャー・ファクトリーといった面々だ。これら各社について、直近の業績を見てみよう。
ゲオは、ビデオレンタル店舗だけでなく、中古品小売業であるセカンドストリートなども運営しており、そのリユース売り上げ(20年度)は前年比6.9%増と、順調に推移しているようだ。一方、ブックオフ、トレジャー・ファクトリーは20年4〜5月の緊急事態宣言による休業の影響で、前年比マイナスとなっている。その他、ハードオフはプラス成長、参考値として掲出したバイセルテクノロジーズ、メルカリも大幅に伸びている。
マイナス成長だったブックオフやトレジャー・ファクトリーにしても、既存店売上増減率の推移を見ると、増収基調に転じつつある。全体として中古品売買業界は順調な推移を示しているといえるだろう。
不用品売却に関する意外な調査結果
こうした推移は、消費者の動向に裏付けられている。MMD研究所が4月に発表した「2021年 フリマサービス・アプリに関する利用実態調査」の結果を見てみよう。
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