「打倒ヤマダ」のヒントは復調中のブックオフにあり? リユース(中古品売買)業界が生き残るヒント:小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)
ヤマダデンキがアウトレット部門へ注力し始める。迎え撃つリユース業界は、コロナ禍でも比較的好調で推移している。中でも、生き残るヒントはブックオフにあるかもしれない。
調査結果によると、モノの売却で利用する場所はリサイクルショップ(実店舗)が50.9%、フリマアプリが35.5%、買い取り専門店(実店舗)が32.3%となった。つまり、コロナ禍、あるいはITがこれだけ浸透した今でも、多くの人がリアル店舗にモノを持ち込んでいる傾向が明らかになった。
フリマアプリは便利だし、送料が小さいものであればいいが、本当の不用品でかつ価格が高くないようなものだと手間ばかりかかるし、多くの不用品をいっぺんに処分してしまうのなら、リサイクルショップに持ち込んで終わり、という方が手間がかからないと感じる人は多いのだろう。まだもうしばらくコロナ禍が続く間は、実店舗を持つリサイクルショップに追い風が吹くのかもしれない。
そうした中でも最近、筆者が特に注目しているのがブックオフだ。
ブックオフといえば、チェーン店としては老舗といえる、古本販売出身の総合リサイクルショップであるが、少し前にはビジネスモデルの陳腐化がうかがえるような業績の低迷が続き、「オワコン」と囁かれるような時期もあった。しかし、最近は業績もかなり持ち直しており、コロナ禍による追い風も、今後はさらにプラスとなる可能性が高そうだ。
同社の特徴の一つは、リアル店舗とITをうまく融合している点だ。実際に店舗へ行ってみると、アプリのダウンロードを推進しているようすがうかがえる。そして、このアプリが結構「使える」のである。
一般にリサイクルショップチェーンは単価が安く、配送コストを割けないことや、フランチャイズ加盟店が多いことなどから、「商品の店舗間移動」という概念がない。同社のネットサービス(ブックオフオンライン)も、以前は直接配送が基本で、一定の金額以上であれば送料無料という仕組みだった。
ところが今は、アプリで検索した本を近隣のリアル店舗に無料で配送してくれるので、バラバラと頼んでも、その店舗へ取りに行けば送料もかからず、店舗で決済して引き取れるようになっている。
筆者は仕事柄、参考図書として古本を集める機会も多いのだが、在庫量が多いブックオフだと、欲しい古本を入手できる可能性が結構高い。その上、近くの店にいくだけで、数冊単位から取り寄せできるので、とても重宝していて、最近では古本の購入は、かなりの部分がブックオフ経由になってしまった。アプリ利用者の増加と活性化が進んで、利便性向上が実感されれば、高い知名度と豊富な店舗網を持つブックオフは、今後さらなる業績改善が見込める可能性を持っているといえる。
追い風が吹く中古品売買、これからの課題は
ブックオフのように、ネット/アプリ活用に活路を見いだすことができそうな中古品売買業界だが、気になることもある。
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