ハラスメントブームの功罪 立て続けに起こる「就活セクハラ」報道に潜む違和感をひもとく:犯罪? ハラスメント?(1/4 ページ)
最近、採用担当者の「セクハラ」事件が多いが、果たしてそれらを「セクハラ」で片付けていいのか。言葉で事象を可視化するメリットがある一方、ハラスメントブームには注意点も必要ではないだろうか。
職場の中においては組織特有の力関係や密室が生まれやすく、そのせいで働く人が不快感を覚えたり、心身が追い詰められたりするような“不健全”な行為が起きてしまうことがあります。
そんな不健全な行為の存在は、長い間「我慢すべき対象」として見て見ぬふりをされ、致し方なく受け入れられてきた感があります。しかしながら、「ハラスメント」という言葉が世に広がるとともに、改善すべき問題として認識されるようになってきました。
パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)などがその代表格ですが、今ではさまざまな場面で「○○ハラスメント」という言葉が盛んに用いられるようになっています。
パワハラやセクハラのような不健全な行為は、かねて存在が認識されていたにもかかわらず、世の中で問題視されるようになるまでに長い時間を要しました。その要因としては、価値観の変化に時間がかかったことが挙げられますが、それに加え、問題となる概念を表す言葉が世の中に浸透していなかったために、認識を共有する難易度が高かったことも大きいと考えます。
ハラスメントという言葉が浸透したことで、新たにさまざまなハラスメントが“発見”され、人々がその存在を可視化できるようになりました。もし、ハラスメントという言葉が浸透してなかったとしたら、妊娠・出産などを理由に解雇するなどのマタニティハラスメント(マタハラ)や、女性だけにお茶くみさせるなどのジェンダーハラスメント(ジェンハラ)のような概念を多くの人々の間で共有するのは大変だったはずです。世の中で問題意識を共有するには、問題となる対象を言葉にして輪郭をつける“可視化”が大いに有効なのです。
過労死という言葉は、今や「karoshi」と英語表記しても海外で意味が通じるといわれます。人が過労によって死に至ってしまうという状況を問題として可視化する上で、その概念を表す言葉の存在がいかに重要であるかを示す事例の一つだと思います。
ただ、「〇〇ハラ」の種類は増える一方で、中には名称だけ見てもどんなハラスメントなのか分かりづらいものもあります。
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