ハラスメントブームの功罪 立て続けに起こる「就活セクハラ」報道に潜む違和感をひもとく:犯罪? ハラスメント?(2/4 ページ)
最近、採用担当者の「セクハラ」事件が多いが、果たしてそれらを「セクハラ」で片付けていいのか。言葉で事象を可視化するメリットがある一方、ハラスメントブームには注意点も必要ではないだろうか。
例えば、パタニティハラスメント(パタハラ)もその一つです。パタニティ(paternity)は、「父であること」を意味する単語ですが、一般になじみがある言葉ではありません。しかし、男性育休取得に関する法改正などが話題になったことで、パタハラという言葉をよく耳にするようになりました。
「男なのに育休を取るなんて」といった言葉を投げかけるのは、パタハラに該当します。世の中の動きと連動しながら、これまで見えづらかった不健全な行為がハラスメントとして人々の間で新たに認識されるようになった事例です。
また、コロナ禍を機に耳にするようになったのが、リモートハラスメント(リモハラ)です。これは、リモートワークを通じて起きるハラスメント全般を指す言葉です。例えば、テレビ会議の場で相手が見られたくないものを画面に映すよう強要したり、業務上の必要性を超えてカメラの常時接続を要求し、束縛したりするようなケースなどが該当します。
言葉遊びとなってしまうケースも
これら新たなハラスメントが社会を啓発する一方、世の中の動きに連動して新しいハラスメントが生まれる度に、○○ハラだ、△△ハラだと、何かにつけてハラスメント扱いされてしまうことが「窮屈で仕方ない!」という声も聞こえてきます。
確かに、いちいちハラスメントだといわれてしまうと、神経が休まらなくなる気持ちは分かります。何かにつけてハラスメント扱いすること自体もハラスメントだと見なす、ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)などという言葉も生まれてしまいました。こうした「ハラスメントブーム」ともいえる現状は、言葉遊びのような一面も感じます。
ハラスメントの可視化が言葉遊びになってしまっては無意味なのはいうまでもありません。加えて、ハラスメントという言葉の使い方にも注意を払う必要があります。
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